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心不全とWPW症候群
進行する心不全と、突然死リスクの不整脈

高橋 通
高橋 通

東京国際クリニック 院長
医学博士・循環器内科

この記事の監修者

高橋 通
東京国際クリニック 院長/循環器内科
日本循環器学会循環器専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本人間ドック学会認定医、日本抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医。1994年筑波大学医学専門学群卒業。2008年、東京大学大学院医学系研究科医学博士課程修了。1994年から長年にわたり、国立国際医療研究センターや東京大学医学部附属病院の救急医療現場での循環器専門医としての臨床経験を経て、2015年より東京国際クリニック院長。

見直された心不全の定義

心不全とWPW症候群
進行する心不全と、突然死リスクの不整脈

心不全とは、様々な原因により、心臓のポンプ機能が低下して体に十分な血液を送り出せなくなった状態です。
ストレスが多い現代社会において、心不全の総患者数は年々増え続け、2030年には130万人に達すると予測されています。今年3月の日本循環器学会で「心不全診療ガイドライン」が新たに公表されました。その中で心不全の定義が見直され、一般の方にも「心不全とは心臓が悪いために息切れや、むくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義されました。
つまり心不全は「進行性の病気」であることが明確化されたのです。発症前から治療抵抗性に至る過程は大きく4つのステージに分けられており(図1)、それぞれのステージで医療がどのように介入していくかが、よりわかりやすくなりました。
最初のステージでは高血圧、糖尿病などの危険因子があり、徐々に虚血性心疾患や左室肥大が進み、心不全ステージになると入退院を繰り返すようになり、徐々に慢性化、急性増悪を繰り返しながら心機能が不全状態になるということです。

心不全の各種検査

(図1:心不全とそのリスクの進展ステージ/心不全診療ガイドラインより)

急性・慢性心不全診療ガイドライン

心不全を早期に発見するには、血液検査や胸部レントゲン検査、心電図検査、心エコー、CT、MRIなどの検査が行われます。特に「BNP」という心臓から分泌されるホルモンの計測は重要で、心臓への負担の大きさをチェックできます。当クリニックでは、これらの検査に加え、「MCG検査(心筋虚血診断検査)」という米国のデータベースを使った虚血性心疾患のリスクを発見できる検査も行っています。
(MCGが含まれるドック:総合人間ドック・スーパープレミアム、心臓ドック)

WPW症候群とは

今回は、全人口の0.1~0.3%は存在すると言われる「WPW症候群」についてご説明します。
正常の心臓では、「刺激伝導路」と呼ばれる1本の電線が心房から心室にあり、そこを電気信号が伝わって心臓の収縮・拡張が行われています。この刺激伝導路以外の部位には、電気信号が伝わらないように絶縁されています。
ところがWPW症候群の方の心臓には、心房と心室の間に「ケント束」と呼ばれるバイパスのような副伝導路が先天的にあります。普段はまったく無症状ですが、電気信号がこの副伝導路を介して心室に異常な伝導が行われると、頻脈性の不整脈を起こすことがあり、動悸、失神や最悪の場合は突然死に至ることもあります。
根本的な治療法としては、大腿部からカテーテルを心臓内に挿入し、副伝導路部分に高周波電流を通電して焼灼するカテーテルアブレーションという治療法がとられます。
日頃から無症状であっても検診でWPW症候群と言われた方は、定期的に心電図検査を受けて、ご自分の心臓の状況をチェックされることをお勧めします。
心房細動は、年齢とともに増加傾向にあります。WPW症候群と診断された方が心房細動を合併すると、突然死のリスクが上昇するため、専門医の定期的な検査を受けられることが大切です。


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