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新型コロナウイルス感染症と循環器疾患
ウイルス感染と生活変容による心臓リスク

高橋 通
高橋 通

東京国際クリニック 院長
医学博士・循環器内科

この記事の監修者

高橋 通
東京国際クリニック 院長/循環器内科
日本循環器学会循環器専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本人間ドック学会認定医、日本抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医。1994年筑波大学医学専門学群卒業。2008年、東京大学大学院医学系研究科医学博士課程修了。1994年から長年にわたり、国立国際医療研究センターや東京大学医学部附属病院の救急医療現場での循環器専門医としての臨床経験を経て、2015年より東京国際クリニック院長。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐため、国民には「新しい生活様式」という行動変容が求められています。在宅でのテレワークの奨励や仕事環境の変化によるストレスなどで、循環器系に及ぼす影響はどのようなものがあるでしょうか。特に新型コロナウイルス感染症では、高血圧の持病のある方が重症化するとの報告もあり、循環器疾患とこのウイルス感染との間に何らかの関係があることが報告されています。〝WITHコロナ″の時期をどのような点に注意して過ごせばよいのか伺いました。

コロナ太り~コロナメタボへの進展

新型コロナウイルス感染症で、政府の緊急事態宣言解除後に人間ドックをお受けになられた方々の検査結果で気になるのは、体重が増加している方が増えていることです。ここ数か月の間に「体重が増えました」という方の血液データを拝見すると、血糖値や中性脂肪の値が悪化していたり、脂肪肝のデータが悪くなっているという傾向があります。

さらに、いわゆる“自宅飲み”が増えたことから尿酸値が上がっている方も見受けられます。逆に自粛以前は毎晩のように会社の接待があった方は、外食が減り体重が落ち肝機能も良くなり、尿酸値も下がる傾向にあります。
在宅テレワークでは、座りっぱなしのデスクワークになりがちです。運動量についても、以前は毎日8,000歩 歩いていた人たちが、外出自粛で平均3,000歩になってしまったという調査報告もあります。運動不足によるコレステロール値の悪化、糖尿病の悪化、メタボリックシンドロームによる動脈硬化の促進などが起きてきます。

新型コロナウイルス感染症と循環器疾患
ウイルス感染と生活変容による心臓リスク
新型コロナウイルス感染症と循環器疾患
ウイルス感染と生活変容による心臓リスク

ストレスによる症状悪化も深刻

さらに、毎日の陽性者数増減などのニュースに接することによる精神的なストレスの影響も見逃せません。こうしたストレスを受けると不眠や疲れとなって現れ、交感神経が優位となり、それが原因で脈が速くなったり、血圧も高くなります。このようなことはやがて心臓や血管へのダメージとなって現れます。
動悸・息切れの頻度が増えるようでしたら、直ぐに循環器科をご受診ください。

通勤時や仕事環境の変化による新たなストレス

また、政府の勧める「新たな生活様式」をとりたくても、通勤時の電車のつり革や手すりからの感染の恐怖感や、満員電車での密な環境での不安、さらに長引く不況や将来的な生活不安、来るべき冬にはさらにコロナの陽性患者が増加するのではないかなど、まさにコロナ禍での新しい種類のストレスに私たちは日々さらされています。

自律神経失調症へのステップ

こうした状況下では、やがて交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、「自律神経失調症」を引き起こすことも考えられます。不眠や食欲減退、疲れが取れない、だるいなどの症状からさらに進展し、頭痛、めまい、動悸、息切れ、冷えなど自律神経失調特有の症状が出現します。
さらに進むと、いら立ちやすくなったり、涙もろくなり、どうしようもない不安感にかられて日々の生活にも支障を来すというような状況になってしまいます。
このようないわゆる「コロナうつ」ともいうべき症状は、テレワークで発見がより遅れるということも考えられます。自覚症状やご家族からの指摘などで、「最近、少しいら立つことが多い」とか、「理由がなく、とても不安になることがある」というような方は、早めの心療内科へのご受診をお勧めします。

新型コロナウイルスによる血栓症にも注意を

加えて、「新型コロナウイルスによる血栓症」にも注目が集まっています。通常、私たちの体は感染を受けるとサイトカインという免疫細胞から出るたんぱく質で防御機能が働きます。新型コロナウイルス感染では「サイトカインストーム(免疫暴走)」と呼ばれる状態が起き、血液中の凝固因子の働きを活発にします。これが動脈や静脈に血栓を作ってしまう要因となります。
一方、肺から侵入したウイルスが血管に入り、血管内皮細胞にあるACE2という酵素を介して細胞内に侵入し、血管に炎症を起こして傷をつけ血栓が生じるという2つのパターンがあります。
例えば足の静脈で生じた血栓が肺に飛ぶ「肺血栓塞栓症」、いわゆる「エコノミークラス症候群」を引き起こす元にもなるのです。これが動脈系で発生すれば、心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなります。
高血圧や脂質異常症、糖尿病、喫煙者、肥満の方は、血管がすでに傷ついている可能性がありますので、こうした方々は特に新型コロナウイルスの感染には万全の注意をお願いします。

一年に一度は「LOX-index(ロックス・インデックス)検査」をお受けください

LOX-index検査は、脳梗塞・心筋梗塞発症リスクを評価する検査です。日本国内で行われた、約2,500名を約11年追跡した研究成果がベースになっています。この研究結果から、血液中のコレステロールに関連する特定のタンパク質などを調べ、この値が高いと今後10年以内の脳梗塞の発症率が約3倍、心血管疾患発症率が約2倍となることがわかりました。

WITH コロナ・ワンポイントアドバイス

自律神経失調症にならないために、副交感神経が優位になるような生活をおくることが大切です。そのためには意識して腹式呼吸を行うこと。体を柔軟にするストレッチは血管も柔らかくなります。さらに、人の少ない時間帯を狙って、ご自宅周辺をウォーキングすることもお勧めです。

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