「尿に血が混じる」「トイレが近くなった」は要注意!
下腹部の痛みや体重減少はないですか?
膀胱がんとは
膀胱がんは膀胱の内側にある粘膜から発生する悪性腫瘍です。主なリスク要因には喫煙、化学物質への長期間の曝露、慢性的な膀胱炎、などがあります。膀胱がんの初期症状には血尿(尿に血が混じる)が最も一般的で、痛みや排尿時の不快感も見られることがあります。診断には尿検査、膀胱鏡検査(膀胱内を観察する検査)、CTやMRIなどの画像検査が行われ、治療方法はがんの進行度や広がりに応じて手術、薬物療法、放射線療法が選択されます。
早期発見が治療法や予後を大きく左右するため、定期的な検診が推奨されます。

膀胱がんの主な症状
①膀胱がんの主な症状
血尿(尿に血が混じる)
- 排尿時の痛みや不快感
- 頻尿(頻繁に尿意を感じる)
②膀胱がんの進行後の症状
- 排尿障害
- 腰や背中の痛み
- 全身症状
- 脚の浮腫
◇ 膀胱がんの初期症状
膀胱がんの初期症状として「無症候性肉眼的血尿」があげられます。これは、自覚症状がなく血尿が出る状態です。
- 血尿
膀胱がんの初期には、血尿が最も一般的な症状です。血尿は鮮やかな赤色からピンク色、時には茶色になり目で見てわかる血尿と顕微鏡でないと確認できない血尿があります。痛みを伴わないことが特徴で、しばらくすると消えてしまうこともあるため注意が必要です。 - 排尿時の痛みや不快感
軽度の痛みや焼けるような感覚、不快感が排尿時に現れることがあります。 - 頻尿
通常よりも頻繁に尿意を感じることがあります。これは膀胱の内部に異常があるためです。
◇ 膀胱がんの進行後の症状
膀胱がんが進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
- 排尿障害
膀胱がんが進行すると尿道が狭くなり、尿の流れが妨げられ排尿障害が生じることがあります。 - 腰や背中の痛み
膀胱がんが進行し排尿障害を起こすと、行き場を失った尿が腎臓に貯まり尿管や腎盂を拡張する水腎症になり背中に痛みを感じることがあります。 - 全身症状
進行した膀胱がんにより、全身的な症状が現れることがあり、体重減少や倦怠感、食欲不振が生じることもあります。 - 脚の浮腫
膀胱がんがリンパ節に広がると、浮腫があらわれることがあります。
これらの症状は膀胱がんの進行度によって異なりますが、膀胱炎や尿管結石などと類似した症状が現れることがあります。また、前立腺がんや腎臓がんなども同様に尿中血や腹部腫瘤を伴う場合があるため、症状を放置せず専門医の知識に基づく見極めが重要です。

膀胱がんの診断方法
膀胱がんの診断には、次のような検査方法があります。
- 尿検査で血尿やがん細胞を確認
- 尿中腫瘍マーカー検査
- 膀胱鏡検査(内視鏡)で膀胱内部を観察
- CTやMRI、超音波(エコー)検査などの画像診断
- がんの進行の程度を調べる「TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)」
◇ 尿検査
尿中の潜血や炎症の反応を確認します。
◇ 尿細胞診検査
尿中にがん細胞が出ていないかを顕微鏡で確認します。この検査は膀胱がんの検出に有用です。
◇ 尿中腫瘍マーカー検査
尿中に含まれるNMP22やBTAを測定し、がんの可能性を評価します。腫瘍マーカー値だけでは判断できないため、病理検査や画像検査と併用し医師が判断します。
◇ 膀胱鏡検査
膀胱鏡という細長いチューブ状のカメラを尿道から膀胱に挿入し、尿道と膀胱の中を観察します。膀胱の内壁を詳しく観察し、異常な組織や腫瘍の有無を確認します。必要に応じて、生検(組織採取)も同時に行われます。膀胱内の異常な部分から組織を採取し、病理検査でがんの有無を確認するためです。
◇ CT検査
身体の断層画像を撮影し、膀胱や周囲の組織の異常を詳細に確認します。がんの広がりやリンパ節の状態も評価できます。より詳しく調べるために造影剤を使用する場合があります。
◇ MRI検査
強力な磁石と電波を使用して、身体の詳細な画像を作成します。膀胱の構造やがんの広がりをより鮮明に見ることができます。
◇ 超音波検査
下腹部に超音波を当てて膀胱の内部を画像として映し出します。非侵襲的で簡便な方法ですが、がんの詳細な情報を得るには限界があります。
膀胱がんの治療法
膀胱がんの治療法は内視鏡手術(TURBT:経尿道的膀胱腫瘍切除術)、外科手術、放射線療法、化学療法、BCG膀胱内注入療法などがあります。
手術は膀胱の一部または全摘出を行い、放射線療法はがん細胞を破壊する高エネルギーの放射線を照射します。
化学療法は抗がん剤を使用してがん細胞を攻撃し、BCG膀胱内注入療法はBCG菌を使って免疫反応を促進し、がん細胞を攻撃します。
治療は、がんの進行度やがんの性質、身体の状態に基づいて検討されます。
◇ 手術による治療
膀胱がんでは、まず内視鏡検査を兼ねた「TURBT:経尿道的膀胱腫瘍切除術」が行われます。
- 【TURBT:経尿道的膀胱腫瘍切除術】
TURBTは膀胱がんの初期段階や表在性がんの治療に広く用いられる手術方法です。尿道から膀胱内に内視鏡を挿入して、電気メスでがんを切除します。
■ 手術の手順- 患者様に腰椎麻酔または全身麻酔を施します。
- 膀胱鏡という細長いチューブ状の器具を尿道から膀胱に挿入します。
- 膀胱鏡の先端に取り付けられた電気ループを使って、腫瘍を切除します。
- 切除された組織は病理検査に送られ、がんの性質や広がり(深達度)を評価します。
- 【外科手術】
原則遠隔転移のない筋層浸潤膀胱がんでは、膀胱の周囲のリンパ節を切除する「膀胱全摘手術」が基本となります。 - 【膀胱全摘出術】
膀胱全摘出術は進行した膀胱がんに対して行われる手術です。
■ 手術の手順- 患者様に全身麻酔を施します。
- 腹部を切開し、膀胱全体と周囲の組織(場合によってはリンパ節も)を摘出します。
- 尿の流れを確保するために、腸の一部を使って新しい尿路を再建します(尿路変向手術)。
- 【ロボット支援手術】
ロボット支援による腹腔鏡下手術を用いて膀胱を摘出する方法です。
■ 手術の手順- 患者様に全身麻酔を施します。
- 小さな切開口を通じてロボットアームとカメラを挿入します。
- 外科医がロボットアームを操作し、精密に膀胱を摘出します。
- 上記尿路変向術をロボット手術で行います。
(尿管皮膚瘻の場合はロボット摘出後、皮膚に執刀医が直接縫い付けます)
◇ 放射線療法
【放射線療法による治療方法】
膀胱がんの放射線療法は高エネルギーの放射線を用いてがん細胞にダメージを与え縮小させる方法です。
転移がない筋層浸潤性膀胱がんの治療は、膀胱全摘手術が基本ですが、基礎疾患があって手術が難しい場合や膀胱の温存を希望する場合には、放射線治療を内視鏡手術(TURBT)や薬物療法と組み合わせた膀胱温存療法を検討する場合があります。治療の特徴やメリット・デメリットを十分に理解し、医師と相談することが大切です。
◇薬物療法
薬物療法は、体内に薬物を取り入れ、がんの成長を遅らせたり、増殖を抑えたりする治療法です。
- 化学療法(抗がん剤)
抗がん剤を内服や点滴で投与し全身に運ばれ、がん細胞を攻撃します。
一般的に使用される抗がん剤には、シスプラチン、ジェムシタビン、メトトレキサートなどがあります。治療は数週間ごとに行われ、1クールの治療が数ヶ月続くこともあります。 - 免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞が、がん細胞を攻撃する力を保つ薬剤です。免疫細胞は本来、細菌やがん細胞などの異物を見つけると、攻撃する性質を持っています。その一方、働きが過剰にならないようブレーキをかける機能も備えています。免疫チェックポイント阻害薬は、そのブレーキを解除し、人体がもともと持っている免疫細胞の力を高めがんの進行を抑える、薬剤による免疫療法です。
この療法は、免疫機能を活性化するため、正常な細胞の免疫反応も過剰となり、自己免疫疾患のような副作用を起こすことがあります。治療前に適切なインフォームドコンセントを受けることが大切です。
◇ 膀胱内注入療法
BCG膀胱内注入療法
BCG膀胱内注入療法は膀胱がんの治療方法の一つで、がん細胞を攻撃するための特別なワクチンを使います。
具体的な手順は以下の通りです。
まず、患者様は医師によって膀胱内視鏡検査を受けます。これは膀胱の中を見るための検査で、カメラを使って内部を観察し、次にBCG液と呼ばれる薬剤を使って治療が行われます。BCG液は生きた結核菌から作られたワクチンで、膀胱がん細胞を攻撃する免疫反応を促進します。
治療の際には専用のカテーテルと呼ばれる細いチューブを使って膀胱にBCG液を注入し、BCG液が膀胱の中に流れ込み、がん細胞を攻撃します。患者様は数時間膀胱にBCG液を保持して、その後BCG液を排出するために排尿を行います。
治療は通常、1週間に1回のペースで数回行われます。BCG膀胱内注入療法のメリットは、膀胱がんの再発や進行を遅らせる効果が高いといわれています。その一方、発熱や膀胱刺激症状などの副作用があらわれることがあります。
手遅れになる前の発見のために、人間ドックを受診しましょう
早期の膀胱がんは、痛みを伴わない血尿で見つかることが多く、検診や人間ドックの検尿で「尿潜血」の所見がきっかけで見つかることがあります。膀胱がんは、早期であれば内視鏡で患部のみを切除する手術で対応できますが、進行すると膀胱全摘出や抗がん剤治療、放射線治療などが必要になってしまうこともあります。がんの早期発見のために、定期的に人間ドックを受診しましょう。
まとめ
膀胱がんは膀胱の内側でがん細胞が増える病気です。国立がん研究センターがん統計によると、2019年に新たに膀胱がんと診断された人は、男性17,498人、女性5,885人、合計23,383人で男女に罹る病気ですが、男性は女性に比べて3倍以上でした。年齢は、男性は50歳以上、女性は60歳以上で増加傾向にあります。※1
膀胱がんの危険因子には、喫煙や生活習慣、アニリン、ベンジン、ナフチルアミンなどの化学物質に長期間晒されることによります。喫煙は、発がん性物質が体の外に排出される過程で、膀胱の上皮細胞に遺伝変異をもたらすと考えられています。喫煙の習慣がある方は、禁煙することが膀胱がんの予防に最も大切です。
そして、人間ドックや検診で行う尿検査や血液検査、超音波検査などを受けることで、膀胱がんを早く見つけることができ、早期に治療を始めることで治る可能性が高まります。また、膀胱がんは再発しやすいがんとされています。定期的な人間ドックは、自分の健康状態を把握し、病気を未然に防ぐことができます。
SBIメディックでは、提携医療機関である「東京国際クリニック」が2023年より新たに泌尿器科を診療科目に加えたことにより検査体制がより一層充実いたしました。ご興味がございましたら資料請求よりお問い合わせください。
※1:2024.02.28更新 国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」より