肺がんで見られる初期症状とは?早期発見のための検査についても解説

井坂珠子
井坂 珠子
井坂珠子
井坂 珠子

医学博士・呼吸器外科

日本のがんの死亡者数が最も多い肺がん。肺がんは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。肺がんの初期症状として特有の症状はなく、進行した場合でもほとんど症状が現れないこともあるため、症状から早期発見することは難しいといわれています。肺がんは進行して初めて、いくつかの症状が現れることがあります。

肺がんとは

肺がんは、肺にできるがん(悪性腫瘍)のことです。気管支や肺胞の細胞が何らかの原因によりがん化したことをいいます。がん細胞は正常な細胞と違い、無秩序に増え、周りの組織を壊したり、他の臓器に移動し、移動した場所でまた増えていきます(転移)。肺がんは早期には症状が見られないことも多く、進行して初めて症状がでることもあります。

【肺がんの種類】

肺がんには大きく分けて2つの種類があります。小細胞肺がんと非小細胞肺がんです。

① 小細胞肺がん
小細胞肺がんは肺がん全体の約1割を占めます。進行が早いため、気づいた時には、脳や肝臓、リンパ節、骨に転移しているということもあります。特に喫煙者に多く認められます。

② 非小細胞肺がん
非小細胞肺がんは小細胞肺がん以外の肺がんのことで、全体の約9割を占めます。
その中には、主に3つのタイプがあります。

  • 腺がん:肺がんの過半数を占め、特に女性や非喫煙者に多く認められます。肺の末梢の気管支や、肺胞に発生し易いため、症状が出にくいことが多いです。
  • 扁平上皮がん:肺がんの約3割を占めます。喫煙との関連が大きいとされています。肺の入口の太い気管支に発生することが多いため、咳や血痰などの症状が出やすく、進行に伴い気管支が狭くなり、息切れや呼吸困難などが現れます。
  • 大細胞がん:比較的稀なタイプのがんですが、再発率が高いがんです。進行が早く周囲に浸潤することがあります。リンパ節や他の臓器に転移し易く、腺がん同様に肺の末梢気管支や、肺胞に発生します。

肺がんの最大のリスク要因は喫煙です。タバコに含まれる有害物質や発がん性物質が肺の細胞を傷つけ、がんを引き起こします。
周囲の人が吸うタバコの煙にさらされる受動喫煙もリスクを高めます。大気汚染やアスベスト、遺伝的要因もがんのリスクを高めることがあります。
肺がんが症状から発見されることは少ないですが、進行すると咳、胸痛、息切れ、体重減少、血痰、発熱などが現れます。
早期発見のためには、定期的な検診を経年で受けることが大切です。
治療には手術、放射線療法、化学療法があります。治療法は、がんの種類や進行度、患者様の健康状態によって異なりますので、状態をみながら治療方法を選択します。

肺がんにかかりやすい人の特徴

肺がんになる人にはいくつかの特徴があります。

【喫煙】

肺がんの発症リスクを高める主な要因は喫煙です。タバコには多くの有害物質が含まれており、これが肺の細胞を傷つけ、がんを引き起こす原因となります。長期間喫煙している人や一日にたくさんタバコを吸う人は特にリスクが高くなります。また周りの人が吸うタバコの煙を吸ってしまう受動喫煙により2~3割程度、肺がんのリスクを高めるといわれています。

【加齢】

肺がんの多くは50歳以上から罹患する割合が高くなる傾向があります。年齢を重ねるとともに細胞の修復力や、免疫力が低下するため、がんになりやすくなります。

【他の病気】

肺の病気がある方は、肺がんの発生の危険性が高まるといわれています。例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)や結核などに罹患されていると、肺の細胞がダメージを受けやすく、がんが発生しやすくなります。また、肺がんの家族歴がある方は、遺伝的な要因に加え、同じ生活習慣といった理由から肺がんのリスクが高まる可能性があります。

【その他の原因・誘因】

大気汚染(PM2.5など)やアスベスト、ラドン、クロム、ヒ素などの有害物質に長期間さらされることも遺伝子を傷つけ、肺がんのリスクを高めます。これらの物質が浮遊している環境下で作業する機会が多い方は、吸い込みを予防する対策をとるなどの注意が必要です。

これらの環境に接している方は、定期的な検診を受け、生活習慣を見直して肺がんのリスクを減らすことが重要です。特に喫煙をやめることは、肺がん予防に非常に効果的です。

肺がんの初期症状と、進行後の症状

肺がんは初期症状が乏しいがんです。咳や痰、息切れ、胸の痛みなどが現れることがありますが、肺炎や気管支炎などの病気と症状が同様のため、区別しにくい疾病です。
進行すると、体重減少、慢性的な咳、血痰、呼吸困難、胸痛、飲み込みにくさ、声のかすれなどが現れ、末期には体重の著しい減少や全身の倦怠感、骨折しやすくなるなどの症状が出現します。

◇ 肺がんの初期症状

肺がんの初期症状として特有の症状はなく、進行した場合でもほとんど症状が現れないこともあるため、症状から早期発見することは難しいといわれています。肺がんは進行して初めて、下記のようないくつかの症状が現れることがあります。

【咳、痰】

最も一般的な症状は咳、痰です。特に風邪でもないのに2週間以上の長引く咳や、痰に血液が混じる場合、発熱が5日以上続く場合には、早めに身近な医療機関を受診する必要があります。

【息切れ】

肺がんが進行すると気管、気管支が狭くなり、息切れを感じることがあります。特に少し動いただけで息切れを感じる場合は、医師に相談することが大切です。

【胸痛】

胸の痛みも初期症状の一つです。痛みは常に感じるわけではなく、深呼吸や咳をしたときに強くなることがあります。痛みが続く場合は早めに診察を受けることが重要です。

【声のかすれ】

がんがリンパ節に転移したり、大きくなったりすると、声帯を動かす反回神経に影響を及ぼします。すると、声がかすれたり、変わったりすることがあります。特に声のかすれが長期間続く場合は注意が必要です。

【体重減少】

食欲がない、体重が急激に減少するなどの症状も見られることがあります。これらはがんが体のエネルギーを消費するために起こることが多いです。

◇ 肺がんが進行した後の症状

肺がんが進行すると、さまざまな症状や合併症が現れることがあります。

【進行後の症状】

  • 激しい咳や痰: 咳や痰が慢性化し、血痰が出ることもあります。
  • 息切れ:肺がんが拡大すると、気管、気管支が圧迫されて息苦しさを感じることがあります。
  • 胸痛: 胸部に圧迫感や痛みを感じることがあります。
  • 体重減少: 食欲不振やがんの消耗により、体重が減少することがあります。
  • 倦怠感: 普段の活動が疲れやすくなることがあります。
  • 声のかすれ: 声帯を動かす反回神経の影響で声がかすれることがあります。
  • 首や、腋窩の腫れ: 肺がんがリンパ節に転移すると、首や腋窩に腫れが生じることがあります。

【進行後の病状】

  • 転移: 肺がんも他の臓器や部位に転移することがあります。転移した臓器よって症状や合併症が異なります。
  • 呼吸困難: 肺がんが進行すると、呼吸困難が悪化することがあります。
  • 疼痛: がんが神経や骨にまで広がると、痛みを感じることがあります。
  • 体力低下: がんによる消耗や症状により、日常生活における体力が低下することがあります。

進行した肺がんは、治療が難しくなる傾向があります。しかし、適切な治療やケアを受けることで、症状の緩和や生活の質の向上が期待できる場合もあります。早めに医師や医療スタッフに相談し、適切なサポートを受けることが大切です。

肺がんを早期発見するための検査

肺がんは特有の初期症状がないことから、早期発見のためには定期的に検診を受けることが非常に重要です。健康診断や検診、または症状があって受診した際は、多くの場合胸部X線検査が行われます。肺がんが疑われた場合には、胸部CT検査が行われます。異常が見つかった場合には、肺がんが疑われる部位から細胞や組織を採取する生検を行います。採取した細胞、組織を顕微鏡で観察し、がんであるかどうか、また、がんであった場合はどのような種類のがんなのかを調べます。これを病理診断と言います。

◇ 胸部X線検査

胸部X線検査は、いわゆるレントゲン検査のことで、肺にがんなどの病気の疑いを見つけるのに役立つ検査です。簡便で広く普及した検査で、健康診断やがん検診でも用いられる検査です。しかし、小さな腫瘍や詳細な情報は得られにくいことがあります。そのため、胸部X線検査の結果が「要精密検査」と判定された場合、はっきりとした診断を行うため、胸部CT検査などのより精度の高い画像検査を行います。

◇ CT検査

コンピュータ断層撮影(CT)はX線よりも精度が高く詳細な情報が得られます。肺にがんを疑う病変がないかを調べる画像診断法としては、現在最も有力な方法です。CT検査では肺の内部で枝分かれする気管支や血管も詳細に観察することができ、胸部X線検査では見つかりにくい淡い陰影の病巣や、心臓や横隔膜との重なりの病変を発見することができます。CT検査では 、肺がんの他にも、肺結核や肺炎などがわかります。

前述のように肺がんは特有の初期症状がなく、また治療成績の悪いことで知られています。その理由とは、症状があって発見された時には、既にがんが全身に広がっているケースが多いということがあげられます。肺がんの場合も、毎年人間ドックを受診することで、自覚症状が出る前の早期の段階で発見すれば、QOL(生活の質)を下げることなく治療することが可能です。

まとめ

肺がんは喫煙や大気汚染、遺伝的要因などが原因で発症する悪性腫瘍で、日本人の死亡数が最も多いがんです。※1

特有の初期症状がないため、定期的ながん検診や医師の診察がとても大切です。発見されるとX線検査やCT検査、気管支鏡検査などが行われ、病気の進行具合や治療計画が決定されます。40歳以上で、喫煙歴が長く、肺がんのリスクが気になる方は、定期的な検査を経年で受けることをお勧めします。
肺がんの最大の要因は喫煙です。肺癌のほかに喫煙との因果関係があるとされているがんは、口腔、咽頭がん、喉頭がん、鼻腔・副鼻腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮頸がん、膀胱がんなどがありがます。
健康な人の身体でも毎日たくさんのがん細胞が生まれています。定期的ながん検診や生活習慣を見直し、がんに罹患した場合でも、早期発見・早期治療をすることで生存率を改善することができます。

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※1:2024.02.28更新 国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」より

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