胃がんの初期症状とは?原因や早期発見のための検査についても解説

宮崎郁子
宮崎 郁子
宮崎郁子
宮崎 郁子

東京国際クリニック 副院長
医学博士・消化器内科

胃がんは見つけにくい!
胃の痛みや不快感、食欲がなくなる、体重が減るなどの症状が出てきたら要注意!!

胃がんとは?

胃がんは胃の内側にある粘膜に発生する悪性腫瘍のことです。がん細胞が増殖するにつれ、粘膜から徐々に外側へ広がっていき、さらに進行すると胃の近くにある大腸や膵臓、肝臓などの臓器に浸潤していきます。

【胃がんのステージ(病期)とは】

がんがどこまで広がっているかを「ステージ(病期)」と言い、がんがどれくらい進んでいるかを表すために使われます。がんが胃壁のどこまで浸潤しているか、転移の有無によって4つの病期に分類されます。この結果により治療方法が決まります。

【胃がんの病理タイプ】

胃がん多くは胃壁から発生する腺がんです。腺がんは更に「分化型がん」と「未分化型がん」に分類されます。

◇ 分化型胃がん

がん細胞がまとまって増殖する傾向にあるがんです。悪性度は未分化癌に比べると比較的低いのが特徴です。

◇ 未分化型胃がん

がん細胞がパラパラと散らばり増殖する胃がんです。若年者にも多くみられ、浸潤や発育が早く悪性度は比較的高い特徴があります。「スキルス胃がん」もこれに含まれます。

◇胃がんのリスク要因・かかりやすい人の特徴

胃がんにかかりやすい人にはいくつかの特徴があり、これらのリスク要因を知ることで、予防や早期発見に役立てることができます。

【リスク要因と特徴】

①ピロリ菌感染

胃がんの一番の原因は、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)という細菌に感染していることです。ピロリ菌に感染すると慢性的な胃炎が起こり、その胃粘膜が遺伝子異常を起こし、胃がんのリスクが高まります。ピロリ菌感染は、井戸水や幼児期の口移しなどが原因とされ、世界中で広く見られる感染症です。

②家族歴

家族に胃がんを患った人がいる場合、遺伝的な要因や共有する生活習慣により、将来的に胃がんの罹患リスクが高まります。家族内に胃がんの既往がある方は注意が必要です。

③食生活

塩分の高い食べ物や、保存食(漬物、燻製、塩魚など)の摂取が多い人は、胃がんのリスクが高くなります。逆に、野菜や果物を多く摂ることでリスクが低減されると言われています。また、刺激の強い食べ物や熱い食べ物、暴飲暴食、不規則な食生活も胃に負担をかけるため、日頃から摂生を心がけましょう。

④喫煙とアルコール

喫煙や過度のアルコール摂取は胃がんのリスクを高めます。これらの習慣は胃の粘膜を傷つけ、がん細胞の発生を促進します。たばこの煙には多くの発がん性物質が含まれており、たばこの煙が直接触れるのどから肺にかけての臓器や胃も含めた直接触れない臓器の粘膜からも発がん性物質が影響を与えます。またお酒に含まれるエタノールが分解されたアセトアルデヒドがDNAの合成や修復に悪影響を及ぼすこともがんの原因と考えられています。

胃がんの初期症状

胃がんの初期症状は特有のものがなく、かなり進行しても自覚症状がほとんど現れないことがあります。このため、胃がんは早期発見が難しく、病気が進行するにつれていくつかの症状が現れることがあります。

【胃がんの代表的な症状】

① 食欲不振

食欲が減退し、食事をとる気が起きなくなることがあります。食欲不振の原因として、ストレスや睡眠不足などもありますが、胃がんの初期にも起こる症状なので、何週間も食べる量が減り体重が減少する場合は注意が必要です。

②胃の不快感・上腹部痛

胃の不快感やみぞおち周辺の上腹部痛が続くことがあります。特に食後に感じることが多く、胃の重さや膨満感を伴うこともあります。

③吐き気や嘔吐

胃に異常が生じると、食後に吐き気を感じたり、嘔吐することがあります。これらの症状が頻繁に起こる場合、胃の機能に問題がある可能性があります。

④胸やけ

胃酸が逆流してみぞおちの周辺で胸やけを感じることがあります。胸やけは食道への胃酸の逆流で粘膜が損傷されることにより起こります。特に食後や横になったときに症状が強くなることがあります。

⑤黒い便(タール便)・貧血

胃の内壁から出血している場合、血液が胃酸と混ざり合うことで便が黒くなることがあります。これは、消化器系器官からの異常のサインであり、医師の診察が必要です。
また、長期間にわたる出血が続くと、貧血を引き起こすことがあります。貧血になると疲れやすくなり、顔色が悪くなることがあります。貧血がなかなか改善しない場合は、重大な病気が隠れている場合がありますので精査が必要です。

⑥体重減少

特に理由もなく体重が減少する場合は、注意が必要です。体重減少はがんによる体の消耗や食欲不振が原因となっていることがあります。

胃がんの進行度と症状

胃がんの進行度はステージ(病期)によって異なります。以下は各ステージの代表的な症状です。

① ステージI

がんの浸潤が胃の内側の粘膜下層まででとどまっており症状はほとんど感じない場合が多いですが、時には軽い胃の不快感や消化不良が起こることがあります。

② ステージII

がんの浸潤が広がり始め、リンパ節にも転移している可状態です。胃の不快感や腹痛、食欲不振、体重減少などの症状が現れることがあります。また貧血や吐き気、嘔吐などの消化器症状も見られる場合があります。

③ ステージIII

がんの浸潤が胃の壁を越えて胃の表面に出たり、もしくは近隣の臓器にまで広がり、多くのリンパ節に転移している状態です。
腹部の膨満感や痛みが増し、胃からの出血による黒い便(タール便)や貧血の症状が現れることがあります。食欲不振や体重減少がさらに進行します。

④ ステージIV

がんが多臓器(肝臓や肺など)へ転移し、全身の症状が現れることがあります。体重減少や貧血が著しくなり、食欲不振や腹痛が悪化します。また全身の倦怠感や疲労感が強くなることもあります。

胃がんの早期発見につながる主な検査

胃がんには特有の症状がないことから、早期発見のためには、「がん検診」や「人間ドック」を受けることが重要です。

◇胃部X線検査(バリウム検査)

バリウムという造影剤と胃を膨らませる発泡剤を服用して、胃の形や粘膜の状態をX線で撮影します。凹凸や隆起した状態を確認することができます。

◇胃部内視鏡検査

先端に小さなカメラを内蔵した細い管を経口または経鼻から挿入し、胃の状態を直接観察します。胃部内視鏡検査では、胃だけではなく食道や十二指腸を観察することが可能です。胃部内視鏡は、検査時の嘔吐反応やつらいイメージから検査を受けることを嫌がる方は少なくありませんが、鎮静剤の使用することで痛みを和らげることができます。異常が疑われる病変が見つかった場合は、必要に応じて組織検査を実施します。

◇ピロリ菌検査

胃がんの発生リスクを高める要因であるピロリ菌の感染の有無を調べます。ピロリ菌は胃の粘膜の中に住みつく菌で、感染を放置しておくと慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍などを引き起こします。慢性的な粘膜の炎症は、胃がんの発生リスクを高めます。ピロリ菌検査は、内視鏡、呼気検査、血液検査、便検査、尿検査などがあり、ピロリ菌感染が認められた場合は、除菌薬を服用して治療を行います。

まとめ

胃がんは、男女とも日本人が多く罹患するがんです。かつては日本人の死亡数の第一位でしたが、近年、診断方法や治療方法が向上し、男性では第3位、女性は5位となっています。初期の胃がんには特有の症状が少なく、進行しても自覚症状が現れにくいため、早期発見が難しいことが特徴です。
胃がんの治療方法は手術、化学療法、放射線療法がありますが、早期の発見であれば内視鏡治療で完治できるなど治癒率はぐんと高まります。
早期発見・早期治療は予後を改善する大きな鍵となりますので、何らかの症状が現れる前からの定期的な胃部内視鏡検査を受けることが大切です。

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