歯周病で耳にする【骨が溶ける】とは何か?
歯周病の初期段階は、歯茎にのみ炎症が起きる「歯肉炎」です。この段階であれば患者様ご自身による適切なブラッシングだけで治すことが可能です。
しかし、症状が進むと炎症が歯周組織まで進行した「歯周炎」となります。歯周炎とは、前述の歯肉炎に加えて歯を支える歯槽骨において、「骨吸収」という反応が起きている状態
です。
※「歯周病」とは、「歯肉炎」と「歯周炎(歯肉炎+骨吸収)」を総称したものを指します。

人間は細菌や炎症から身体を守るため様々な防御反応が働きます。歯周炎において起こっている「骨吸収」という反応は、歯槽骨が細菌による炎症から逃れるために一定の距離を保とうとする防御反応による結果です。よく歯周病で「骨が溶ける」というワードを耳にしますが、これは実際には身体の防御反応により生じる「骨吸収」と呼ばれる現象だったのです。
骨吸収は、すり鉢状に斜めに溶ける「垂直性骨吸収」の場合と、水平に溶ける「水平性骨吸収」の場合があります。垂直性の骨吸収は歯周ポケットに治療機器が入りにくいため、プラーク(歯垢)や歯石を取り除くには歯周外科処置によって歯茎を切開する必要があります。
一方で、水平性の骨吸収の場合は歯周ポケットに治療機器が入るため、歯茎を切開しない非外科処置でプラークや歯石を取り除くことができます。
歯周外科処置「フラップ手術」とは
前述の骨吸収が垂直性か水平性かに加えて、歯周病の進行程度が中度以上になると、歯周ポケットはさらに深くなるため、歯周ポケット内に治療機器が届かないケースが出てきます。この場合、奥深くに溜まったプラークや歯石を除去するためには歯根面を露出させる必要が生じます。その際におこなうのが歯周外科処置「フラップ手術」(歯肉剥離掻把術)です。歯周外科処置の最大のメリットは、歯茎を切開することで、歯周病の原因となるプラークや歯石を目視で確認しながら確実に取り除ける点です。歯周病の進行が骨の吸収にまで及んでしまっている場合は、非外科処置よりも的確なデブライドメント(セメント質を傷つけることなく歯周病の原因となるプラークを取り除く治療)やスケーリング(プラークや歯石などの除去)が可能になります。
ただし、効果的な歯周病治療をおこなう上で大前提となるのが患者様ご自身によるブラッシングができていることです。ブラッシングが正しくできていない場合、歯周病の進行スピードを約3倍も早くするというデータもあります。そのため、適応の可否を的確に判断することが重要です。

術式に対する適応の可否を判断し、必要な組織を残すこと
歯周病が進行してしまった場合、東京国際クリニック/ 歯科では、身体的負担の少ない非外科処置(歯茎の切開を行わない)の歯周病治療「PERI OD.ペリオド」をおこないます。
その上で、術後の炎症の有無、治癒の状態、レントゲン写真など、総合的に診査・診断をし、歯周外科処置を実施するべきか判断いたします。
歯周外科処置をおこなう上で大切なことは、前述した適応の可否の的確な見極めと、歯周病治療に対する専門性です。例えば、歯周外科処置をおこなう際、炎症を起こしている組織の中で除去してもいい組織とそうではない組織があることを把握している歯科医師は残念ながら多くはありません。
除去すべきではない組織は、治療後歯と骨をつなぎとめる繊維になり、場合によっては骨に置き換わるものもあるため、必要な組織を残すことは後々の骨の再生に欠かせません。
当院では、歯周病が進行してしまった方にも適切な処置を行わせていただきます。
歯周病でお悩みの会員様、ご自身の歯を残したいと悩まれている会員様、一度ご相談にいらしてください。

清水 智幸
1988年日本歯科大学卒業。
東京国際クリニック / 歯科院長。歯周病治療・歯周外科治療を専門とし、その症例数は10,000症例以上に及ぶ。インプラント治療・インプラント周囲炎治療の講師も務め、後輩の育成にも力を入れている。