2019年のデータでがんの罹患数の順位は、男性では前立腺、大腸、肺で、女性では乳房、大腸、肺となっています。
早期発見、早期治療と言われるがんですが、画像診断でがんと分かるのは決して早期の発見とは言えないようです。
新しいがんの検査法について高橋通院長に伺いました。

マイクロCTC検査の概要についてお教えください。
院長:健康な人では、がん細胞は毎日5,000個くらい生まれて免疫によって消されています。しかし、例えばストレスなどで免疫が低下すると、がん細胞を消すことができずがんは増殖を始めます。
ちょうど1mmくらいの大きさになったときに、がん細胞は栄養源を得るために新生血管という血管を作り既存の血管とつながります。この新生血管を通して酸素や糖分を吸収してさらに大きくなっていきます。がん細胞はこの新生血管内に漏れ出し、さらに既存の血管にも漏れ出します。しかし、この段階の細胞は血管内では長期生存できません。最初のがん細胞は悪性度の低い「上皮性がん細胞」として形成されますが、増殖の過程で上皮間葉転換(EMT)がおこり「間葉系がん細胞」に形質変化をおこすと細胞間の接着が弱まり増殖能力の高い細胞になります。上皮間葉転換(EMT)したあとの間葉系がん細胞が血管内に漏れ出すことによってがんの転移がおこると言われています。
この間葉系がん細胞も新生血管を通じて血中に漏れ出します。間葉系がん細胞は他の細胞に浸潤したり、血管やリンパ管を経由して、他の臓器に転移する能力の高い細胞です。これがいわゆる「怖いがん細胞」と言われるもので、血中での長期生存が可能です。
CTやMRIで発見されるがんは通常直径約1cmの大きさで、がん細胞が増殖を始めてから10年~20年かかるといわれていますが、今回の検査は血液中のがん細胞を直接捕捉しますので、場合によってはそれよりも早く発見することも可能です。通常は生検(細胞診)を行い、顕微鏡で見てがんであることが確認されて初めてがんと確定診断されます。
「マイクロCTC検査」は、血中を循環する間葉系がん細胞を早期に特定して捕捉する検査です(がんの部位は同定できません)。
*CTCはCirculating Tumor Cellsの略

当院導入の背景はどのようなものですか?
院長:現在、がんは2人に1人以上がかかり、40歳以上の死因の約43%ががんといわれています。より早期に発見できれば今や怖い病気ではなくなってきたのですが、ドックなどの検査の時間が取
れない方や、乳がん検診など特定の部位のみ検査されている方も多く、全身のがんの早期発見のための検査ができているとは言えません。当院では、簡便でかつ信頼性の高いがん細胞の有無を
探る検査を求めておりました。

この検査の信頼性についてご教示ください
院長:マイクロCTC検査は、世界的に著名な米国MDアンダーソンがんセンターが開発した抗体を使用しています。特異度94.45%という高い精度を持った抗体を使用しており、血中を流れている、悪性度が高く、浸潤・転移の高い能力をもった間葉系がん細胞を捕捉できますので大変信頼性の高い検査といえます。
他のがん検査との違いはどのような点ですか?
院長:昨今、簡便ながん検査がさまざま話題になっています。これらは全て間接的ながんの統計学上の傾向値を捉えている検査です。そのようなデータから導き出した傾向値を見てがんのリスクの高さ低さを論じているので、信頼性や納得感には課題があります。
検査の結果もA~Eランクで「あなたはEランク」ですとか、バーを出して「あなたはこの辺りです」というような表記をしています。もちろんがん検診ではCTやMRIなど最先端の画像検査を施行しますが、これもあくまでも「がん疑い」でしかありません。確定診断をするためには、前述のように当該部位の細胞を採り光学顕微鏡を使用する「病理診断」を経ないとがんと確定することはできません。
マイクロCTC検査は間接的な傾向値ではなく、血中に漏れ出した悪性度の高いがん細胞そのものを直接捕捉して提示する検査なので、他の簡易検査とは一線を画しています。検査を受ける方の納得感や信頼性の高い検査といえると思います。さらにこの検査は「CTC検査」として欧米でも既に使用され、研究論文も約3万件以上発表されており、がん治療の効果測定などにも使われているエビデンスの高い検査です。
この検査の対象になるのはどのような方ですか?
院長:健常者の方はもちろん、がんの治療を終えられて再発を心配されている方にもお勧めしたい検査です。なおこの検査は、がん治療中の方はお受けいただくことができませんのでご注意ください。
検査にかかる時間はどれくらいで結果はどれくらいで出ますか?
院長:検査自体は採血のみですから数分で済みます。検査結果は約4週間で出力されます。なお、検査前の飲食の制限もありませんし、服薬も通常通りしていただけます。
追加検査が必要なのはどのような方で、どのような検査になりますか?
院長:本検査で悪性度が高く、浸潤・転移能力が高いがん細胞が1個以上検出された方には人間ドックを前倒しで受けて頂きます。コースによっては検査部位が抜けていることがあるのでオプションで画像検査を追加して頂き、場合によっては全身MRI検査やPET検査などの精密検査をお勧めしています。また高濃度ビタミンC点滴などもお勧めしています。
この検査によるリスクはありますか?
院長:採血のみの検査ですので、被検者の方へのリスクは低い安全な検査と言えます。
会員様へのメッセージをお願いします。
院長:がんをより早期発見するために、今回当院では「マイクロCTC検査」を導入することにいたしました。この検査は間葉系がん細胞の写真を撮り、検査を受けた方にお見せすることができる、かなりインパクトのある検査です。わずか4ccの採血だけで、血中を循環する間葉系がん細胞を捕捉することができるこの検査を、ぜひ人間ドックの折にでもお受けいただき、細胞レベルでも安心できる毎日をお過ごしいただきたいと思います。
注:この検査はがんのリスクを確認するための検査であり、確定診断のための検査ではありません。また、検査の特性上、血液のがんは調べられません。