これからはブレインヘルスケアの時代 ~1日でも早く認知症リスクを把握するための検査を~

宮崎郁子
宮崎 郁子
宮崎郁子
宮崎 郁子

東京国際クリニック 副院長
医学博士・消化器内科

宮崎郁子
東京国際クリニック/副院長 医学博士 消化器内科

金山 政作
東京国際クリニック 医学博士 脳神経外科 

宮崎:超高齢社会の進行と切り離せないのが「認知症」です。2020年では認知症患者さんは600万人を超え、2025年では675万人になると想定されています。今後5.4人に1人が認知症になる時代で随分身近な疾患になってきた印象です。今回は脳神経外科の金山先生とブレインヘルスケアの大切さについてご一緒に考えていきたいと思います。

金山:ブレインヘルスケア研究はアメリカが先導していて、バイデン大統領も2022年のFDAの挨拶で「克服する病気として癌よりも先に認知症を述べた」という話をしていました。日本でも「21世紀は脳の時代」と銘打ってさまざまなプロジェクトが動き出しています。

宮崎:日本では平均寿命は延びましたが、健康寿命との乖離があります。しかも要介護となる要因の2割が認知症と言われています。

金山:今の時代、生産年齢人口の減少もあり、70歳、75歳、そしてそれ以上の年齢の方も元気で働ける人でありたいです。ご自分の5年後、10年後を見据えて「体力・知力」を保つ生活を心がけたいですね。

当院の脳ドックについて

宮崎:さて、脳の疾患の検査について考えると、当院の脳ドックの頭部MRI検査ではMRA検査*も含まれているので脳実質全体だけでなく、動脈瘤や脳動脈狭窄など血管系も描出できます。

*MRA検査:Magnetic Resonance Angiographyの略で血管の走行状態や血流を立体的に観察できる検査

金山:そうですね。くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤の確認は非常に重要です。瘤の有無、サイズがわかれば出血予防も事前にできます。くも膜下出血の家族歴がある方は本人もリスクが増すというデータがありますので、家族歴のある方は年齢とは関係なく頭部MRI検査を早めに受けることが推奨されますし、一般的には動脈硬化が進行する40代以降は脳ドックをぜひ受けていただきたいです。

宮崎:当院の脳ドックを受けた方の中に「白質病変」と指摘される方が数多くいらっしゃるのですが…。

金山:白質病変とは大脳白質に起きた虚血のことです。白質病変の多い方は少ない方に比して脳卒中のリスクが高くなると言われており、今後の発症リスクの予測になると思います。

宮崎:白質病変のある方は、高血圧や高脂血症などの病気を合併していることも多いです。生活習慣病が増える40歳くらいから注意が必要ということですね。

金山:ある年にワンポイントで見るのではなく、経時的に進展を見ていくことが大事です。

宮崎:また、「最近もの忘れが気になるのですが、私の脳は萎縮していますか?」というご質問を受けることもあるのですが、頭部MRI検査で認知症の発症予測はできますか?

金山:頭部MRI検査で萎縮が強ければ、残念ながらすでに進行している状態となりますし、初期の認知症の評価はこの検査ではしにくいところです。

認知症検査「VSRAD」

宮崎:そこで当院では頭部MRI検査に「アルツハイマー型認知症診断システムVSRAD(ブイエスラド)」をオプションとして追加できるようにしています。

金山:アルツハイマー型認知症では、脳の中心に近い海馬傍回、扁桃、海馬の萎縮が起こることがわかっています。VSRADではそれらの部分の萎縮度を画像評価します。

宮崎:通常の頭部MRI撮影時間に加えて約5分程度長くなりますが、お体への負担もありません。

金山:この検査の結果は4段階の評価で示され、3以上の場合は脳に萎縮がみられる状態で、アルツハイマー型認知症の可能性が高いと言えます。検査対象は50歳以上の方です。

スクリーニング検査「MCIプラス」

宮崎:ほかにも当院では認知症をより早期に発見するために「MCIプラス」という採血によるスクリーニング検査ができます。

金山:これはアミロイドβの蓄積量に対するたんぱく量を測定して、軽度認知症(以下、MCI)になりやすい方なのか、既にMCIの方なのかを発見する検査です。画像検査が苦手な方は採血でもよいのでブレインヘルスケアに向き合っていただければと思います。

今後導入される検査

宮崎:VSRADを受けてもその後の予防医学に結び付けにくいという課題がありました。そこで、今回新たに2つの認知症検査が導入されます。

新しい認知症検査①

SupportBrain®

金山:将来の認知症リスクをAIが予測する検査です。脳全体の状態から3年後にアルツハイマー型認知症になるリスクをパーセントで表示します。VSRADは、ある程度萎縮が進んだ状態を評価することが一般的でしたが、こちらの検査では脳全体の状態と、さらに同世代の方と比べたときの本人の状態を把握できるのが特徴で、具体的な予防策も付いていますので、もの忘れが気になっている方向けと言えます。50歳以上で認知症と診断されていない方が対象です。

宮崎:生活習慣で脳の健康状態は変わり続けるので、定期的に受けて経年変化を見ていくことも大切だと思います。MCIの段階でも、生活習慣を工夫すれば認知症への移行を遅らせることができますから。

金山:定期的に検査を受け、経年変化を見ていくことをお薦めします。過去の検査結果との比較もできるようになっていますし、早期発見、早期予防が脳の健康、ブレインヘルスケアに繋がります。

新しい認知症検査②

Brain Life Imaging ®

金山:頭部MRI検査の画像から海馬体積を測定しAI解析します。同日に10分間ほどの認知機能テスト(CQテスト)をお受けいただきます。この検査は健常な人(20代から)でも海馬の状態を精度よく測定できるようになったため、若年層へお勧めします。

宮崎:なるほど。もの忘れが気になっている方よりも、もっとライトな方に気軽に受けていただきたい検査ですね。

金山:若い時期に基準を1回残しておけば、それと比較することができます。例えば40代であれば3年おきにこの検査を受け、50代では2年おきにと、もの忘れの自覚がない方でも受けるといいと思います。

宮崎:「あなたへのアドバイス」として、その方に合った睡眠や食事もアドバイスされているので、ぜひご参考になさってください。
なお、各検査の料金は下表の通りです。

宮崎:最後に会員様へのメッセージと、先生の座右の銘をお聞かせください。

金山:SBIメディックの会員様は、ご自分の身体に関心のある方が多く健康についても非常に勉強されておられる印象で、私も治療や生活指導など前向きなご提案をしやすいと感じます。脳ドックで見つかった脳腫瘍や脳動脈瘤の方を、連携している東京大学医学部附属病院にご紹介して私のチームで執刀・手術をすることも可能です。
私の座右の銘は「一期一会」でしょうか。私が関わった患者様には、私の持ち得る技術で何とか病気を治して差しあげたいという一心で向き合っています。そのために私自身も日々知見を高めたいと考えています。

宮崎:脳も身体と同様、生活習慣でその状態は変わり続けるので早期の検査と受診が肝要とわかりました。本日はありがとうございました。

IKUKO’s Advise ~認知症予防のための工夫~

【食事】ポリフェノールやカレーに含まれるクルクミンなどが良いでしょう。魚に含まれるEPAやDHAも予防に繋がります。

【運動】歩くことが少ないと認知症になりやすいという報告もあります。歩く距離は一日3.2kmくらいが最適です。

【笑い】笑うとドーパミンが出て脳が活性化します。少々不満があっても笑顔でいることが大切です!(笑)

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