死亡率が高く増加を続ける大腸がん
わが国で2019年にがんで死亡したのは376,425人で、生涯でがんになる確率は男女とも全人口の2人に1人と言われています。また、国立がん研究センターの2019年の集計によれば、がんの部位別死亡者数で大腸がんは男性では3位、女性では1位で、死亡につながるがんとして男女とも上位を占めています。
しかも大腸がんの罹患率は、この40年間で約7倍に増加しています。消化器系のがんは男性の場合、40歳代の働き盛りの頃から多くなり、60歳以上になると肺がんや前立腺がんが増えてきます。一方、女性は、若い頃は乳がんや子宮がんが多く、高齢者になるにしたがって消化器系のがんが増加傾向にあります。

大腸がんになる要因
大腸がん発生の要因は、肥満気味、お酒をよく飲む、便秘気味、タバコを吸う、脂肪分の多い肉や赤みの多い肉、ハムなどの加工肉をよく食べる、運動不足、偏食などです。また、親族にがんの人がいるとがんになりやすいという遺伝的な要因もあります。

がんは何といっても早期発見、早期治療
どの部位のがんでも早期に発見し、できるだけ早期に治療をすることが重要です。特に大腸がんについては、ステージⅠ~Ⅲの段階では早期に発見し早期治療ができれば、5年生存率は約90%と高いことがわかっています。しかし、大腸がんの早期には自覚症状がありません。「自覚症状がないから大丈夫」「健診で要精密検査になっているが、実際にがんになる人は少ないのでは?」「多忙だから精密検査は先送りしよう」などという考え方は大変危険であると言えます。
大腸がんの検査
従来からの大腸がんの検査には、便潜血検査や大腸内視鏡検査、大腸3D-CT検査などがあります。健康診断や人間ドックでは一次スクリーニングとして検便による潜血検査が行われています。
ただしこの便潜血検査では、がんであるかどうかを決定する感度が低く、がん病変の進行度などによっても結果に大きな差が生じています。また、痔をお持ちの方が陽性になることも多く、これが精密検査を遠ざけて死亡率の増加につながっているとも言われています。
さらに便潜血検査で陽性の場合、大腸内視鏡検査や大腸3D-CT検査も2次スクリーニングとして有用ですが、それぞれの検査でメリットが異なります。便潜血検査の結果をお伝えするタイミングで、どちらの検査をお受けになればいいかをご相談させていただきます。
コリバクチン検査とは?
今回、当クリニックで採用した検査は、大腸がんになりやすいかどうかのリスクを調べる「コリバクチン検査」という方法で、ネイチャー誌に論文も掲載されました。
胃がんは、ヘリコバクターピロリという菌に感染していると発症する可能性が高いと言われ除菌方法も確立されていますが、大腸でも同様にコリバクチンという遺伝性毒性物質を産生する一部の細菌が腸内にいて、大腸がん患者様の実に約7割がこのコリバクチン産生菌に感染していることがわかりました。(図1参照)

具体的な検査法と注意点
コリバクチン検査は、通常の便潜血検査と同様、ご自宅で便を採取する簡単な検査です。
受診される日の3日前までに採便してください
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便潜血の検査も同時に行う場合は、コリバクチン検査の採便を先に行ってください
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検査前の食事制限はありません
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前日の飲酒制限もありません
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女性の方は生理中でも検査可能です
検査結果までの期間
検査容器に採便していただき当クリニックにお持ちいただければ、約2週間後に結果をお知らせします。なお、この検査は胃がんのピロリ菌感染の場合と異なり、結果が陰性でも生活習慣などの改善がみられない場合、半年から1年後に陽性に転じる可能性もありますので、定期的にお受けいただくといいと思います。
この検査のメリット
コリバクチン検査の結果、あなたの将来の大腸がんになるリスクがわかります。リスクが高い方は生活習慣を見直し、大腸がんを予防する行動につなげることができます。
大腸がんにならないために
- 飲酒は控えめに
- 適正体重を維持すること
- 禁煙しましょう
- 赤身肉は1週間で500g未満に(世界がん研究基金/米国がん研究協会)
- 運動は歩行などの身体活動を1日60分。息がはずむ程度の運動を1週間に60分程度。
- 食物繊維の摂取を。バランスのいい食生活を。
Dr‘s Advice!
大腸がんの家族歴のある方やお肉中心の食生活の方、大腸がんをご心配される方には、このコリバクチン検査もぜひお勧めいたします。「検査をするのはどうも億劫だ…」と思われる方にとっても、こうした新しい検査でご自身の疾患へのリスクを探ってみるのも新しい医療の在り方かもしれません。
(検査料:9,900円/税込)