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PSMA治療の日本承認はいつ?【最新】費用と待機期間を徹底解説!

志賀 淑之
志賀 淑之

泌尿器科

PSMA治療の日本承認はいつ?【最新】費用と待機期間を徹底解説!

前立腺がんの新しい選択肢として注目されるPSMA治療は、海外ではすでに承認されており、優れた効果が示されていますが、日本ではまだ承認されていません。しかし近年、国内での治験やPMDA(新薬や医療機器の安全性・有効性を審査する国の専門機関)への届出が進み、承認に向けた動きが加速しています。「PSMA治療の承認はいつ?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。本記事では、PSMA治療の概要のほか、承認への見通しや費用の目安などについて解説いたします。

この記事の監修者

志賀 淑之
東京国際クリニック/泌尿器科
1994年筑波大学医学専門学群卒業。虎の門病院、聖路加国際病院に勤務、東京腎泌尿器センター大和病院院長を経て、2015年からNTT東日本関東病院 泌尿器科専門医、ロボット手術センター長。日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医指導医。2024年1月より東京国際クリニック泌尿器科 勤務。

PSMA治療とは?

PSMA治療とは、前立腺がん細胞に多く発現するPSMA(前立腺特異的膜抗原)を標的に、放射性物質を結合させてがん細胞を攻撃する最新の分子標的治療です。こちらでは、次の4つの観点でPSMA治療についてご説明します。

  • 前立腺がん細胞を狙い撃ちする最新治療法
  • PSMAとは?前立腺がん細胞との関係性
  • ルテチウムPSMA治療の作用メカニズム
  • PSMAとPSAの違い

前立腺がん細胞を狙い撃ちする最新治療法

PSMA治療は、前立腺がん細胞の表面に特異的に発現するPSMA(前立腺特異的膜抗原)を標的にした分子標的治療(がん細胞に特有の分子だけを狙い撃ちする治療法)です。PSMAに結合する薬剤に放射性物質を結びつけ、がん細胞だけに集中的に放射線を届けるため、正常な組織への影響をできるだけ抑えながら、高い治療効果が期待できます。

PSMAとは?前立腺がん細胞との関係性

PSMA(Prostate-Specific Membrane Antigen:前立腺特異的膜抗原)とは、前立腺組織に存在する膜タンパク質のことで、特に前立腺がん細胞では異常に高い頻度で発現することが知られています。正常な前立腺組織や他の臓器にもわずかに存在しますが、がん細胞では発現量が顕著に増加するため、診断や治療における有効な標的として利用されています。

ルテチウムPSMA治療の作用メカニズム

PSMA治療のなかでも一般的な「ルテチウムPSMA治療」は、PSMAに結合する分子に放射性物質「ルテチウム177」を結合させ、静脈注射で体内に投与する治療法です。がん細胞に選択的に付着した薬剤からβ線が放出され、細胞内DNAを損傷して細胞死を引き起こします。正常細胞への影響は少なく、全身に転移したがんにも効果を発揮できるのが特徴です。

PSAとPSMAの違い

PSMAとPSAは名前が似ていますが別の物質です。PSAは前立腺から血液中に漏れ出るタンパク質で、主に前立腺がん検診や進行度の指標に使われます。一方、PSMAは前立腺がん細胞の表面に現れるタンパク質で、がんが進行するほど強く発現します。PSMAは治療の標的として利用される点が、PSAとの大きな違いです。

PSMA治療の費用と保険適用の見通し

日本ではまだPSMA治療は承認されていません。今後の見通しについて、次の3つの観点からご説明します。

  • 日本での保険適用の可能性と時期
  • 治療費の内訳—薬剤費・入院費・検査費
  • 高額療養費制度の適用と自己負担の見込み

日本での保険適用の可能性と時期

PSMA治療は現在、日本では未承認の治療です。今すぐにPSMA治療を受けたい場合は、ドイツやオーストラリアなど承認されている国の医療機関で受けることになります。ただ、国内でも治験が始まっており、明確にいつとは言えませんが、数年後には日本承認や公的医療保険の対象となることが期待されています。

PSMA治療費用の内訳

PSMA治療を海外で受ける場合、費用は大きく「治療費」と「渡航費・滞在費」に分かれます。治療費は1回あたり160万円前後とされ、複数回の治療が推奨されるため合計で数百万円に達します。さらに渡航費・滞在費を含めると総額で約400~600万円が目安だとされています。国内の病院で検査を受け、その病院が提携している海外の病院でPSMA治療を受けるのが一般的です。

高額療養費制度の適用と自己負担の見込み

PSMA治療が日本承認され、公的医療保険の対象になれば、高額療養費制度を活用できるようになり、自己負担額を大幅に抑えられます。たとえば、PSMA治療費用が約100万円、年収が約1,160万円~の場合、自己負担額は27万円前後に抑えられる可能性があります。経済的負担を軽減するという意味でも、早期の日本承認が待たれます。

日本承認前にPSMA治療を受ける方法

とはいえ、今すぐにPSMA治療を受けたいという方も多くいらっしゃいます。日本承認の前にPSMA治療を受ける方法について、次の3つの観点からご説明します。

  • 国内治験に参加する条件と申込み方法
  • 海外渡航治療の具体的な手順とスケジュール
  • 海外治療の費用とリスク—注意すべきポイント

国内治験に参加する条件と申込み方法

日本承認の前にPSMA治療を受ける方法の一つが、国内治験を受けることです。国内治験は、標準治療(抗がん剤や新規ホルモン療法)で効果が得られなかった転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者さんが主な対象となります。治験に参加するには、主治医を通じて治験実施医療機関を紹介してもらい、診療情報提供書や検査データを提出します。条件を満たせば治験に参加することができます。

海外渡航治療の具体的な手順とスケジュール

日本承認の前にPSMA治療を受けるもう一つの方法が、PSMA治療が承認されている国に渡航することです。渡航してPSMA治療を受ける場合、まず日本の医療機関でPSMA PET検査を受けて診療情報を準備し、海外の提携先病院を紹介してもらいます。その後、渡航し現地で治療を受け、数日入院して画像診断をおこない退院、帰国という流れになるのが一般的です。

海外治療の費用とリスク—注意すべきポイント

上述のとおり、海外でのPSMA治療は1回あたり160万円前後が相場であり、渡航費・宿泊費も含めると総額で400~600万円と、経済的負担は大きくなります。また、長時間の移動による負担や日本との医療環境の違い、副作用発生時の対応が遅れる可能性などのリスクも考えられます。医療環境の違いや緊急時のサポート体制などは、事前に確認しておきたいポイントです。

日本でのPSMA治療承認状況

PSMA治療の日本承認はいつなのかと気になっている方に向け、現在の承認状況について次の3つの観点からご説明します。

  • 現在進行中の国内治験の進捗状況
  • PMDA(医薬品医療機器総合機構)の審査プロセス
  • 国内医療機関の受け入れ準備状況

現在進行中の国内治験の進捗状況

日本でもPSMA治療の治験が始まっています。たとえば、大阪大学では現在、[At‑211]PSMA‑5を使用したPSMA標的α線医師主導第Ⅰ相治験(Alpha‑PS1)が進行中です。また、ノバルティス ファーマ株式会社は2024年3月、PSMA陽性転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者さんを対象とした「拡大治験」の治験計画届をPMDAに提出しています。このように、PSMA治療の実用化に向けて着実に前進している状況です。
※参考:難治性前立腺がんに対する医師主導治験を開始 ~アスタチン標識薬を用いた革新的アルファ線治療~ | 大阪大学医学系研究科・医学部
※参考:ノバルティス、PSMA陽性転移性去勢抵抗性前立腺がん患者の治療アクセスの改善を目指す拡大治験の治験計画届を提出

PMDA(医薬品医療機器総合機構)の審査プロセス

新薬が日本で承認されるには、まず非臨床試験や第Ⅰ~Ⅲ相臨床試験を経て有効性・安全性を検証し、その結果を基に製薬企業がPMDAへ承認申請をおこないます。PMDAは提出データを精査し、必要に応じて専門家会議を開いたうえで厚生労働省に答申、最終的に承認可否が決定されます。上述のとおり、PSMA治療については、2024年3月にノバルティス ファーマ株式会社が治験計画届をPMDAに提出しており、現在は治験段階にあります。

国内医療機関の受け入れ準備状況

PSMA治療の日本承認に備え、国内の大学病院や専門クリニックを中心に受け入れ体制の整備が進められています。すでにPSMA PET検査が導入され、治療対象となる患者選定の準備が始まっています。一方で課題もあり、放射性物質を安全に扱うための専用施設や人材育成、薬剤供給体制の整備が不可欠です。また、PSMA治療の日本承認後は保険適用の仕組みを早期に整える必要があり、実用化までには段階的な準備が求められています。

PSMA治療の日本承認時期の予測

PSMA治療の日本承認がいつなのかという予測を、次の3つの観点からご説明します。

  • 専門家による承認時期の見方—2024年最新予測
  • 海外承認からの日本承認までの一般的タイムライン
  • 承認後の実際の治療開始までの期間と待機状況

専門家による承認時期の見方—2024年最新予測

公益社団法人 日本アイソトープ協会が発行する「Isotope News 2025年1月号 特別号No.9」では、「PSMA-617の前立腺癌の177Luの薬についてはたぶん2025年度ないしは2026年度には承認されるだろう」との予測が出されています。一部メディアにおいても、2025年中の日本承認が見込まれているという報道がされています。
※参考:Isotope News 2025年1月号 特別号No.9
※参考:前立腺がんへの放射性リガンド療法、国内導入に期待 | 医学ニュース | Medical Tribune

海外承認からの日本承認までの一般的タイムライン

新薬は、海外で承認されていてもすぐに日本で使えるようになるわけではありません。日本では独自に有効性や安全性を確認するために治験をおこない、そのデータをもとにPMDAが審査します。その後、厚生労働省の承認を経て、ようやく使用できるようになります。この一連の流れに数年を要するため、海外で承認されている薬が日本で使えるようになるまでには「ドラッグ・ラグ」と呼ばれる時間差が生じるのが一般的です。

承認後の実際の治療開始までの期間と待機状況

新薬が承認されても、すぐに全国で治療を受けられるわけではありません。まず国が薬の公定価格を決め、使えるようになるまでに数ヶ月かかります。その後、放射性医薬品を扱える設備や専門スタッフを備えた医療機関から導入が始まります。PSMA治療は需要が高いため、日本承認の直後には待機患者が集中し、実際に治療を受けられるまでに数ヶ月待たなければならない可能性もあります。

まとめ

SMA治療は、日本承認に向けた動きが進んでいます。いつとは明言できませんが、日本でPSMA治療を受けられるようになる日はそれほど遠くないはずです。PSMA治療のような革新的な治療が普及するのは喜ばしいことですが、前立腺がんをはじめとする多くのがんは何よりも早期発見・早期治療が重要です。そのためには、定期的な人間ドックの受診が欠かせません。

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