


日本人女性の9人に1人が罹患すると言われる乳がんですが、早期に発見し、適切な治療を開始できれば、その多くが克服可能です。定期的に乳がん検診を受診することが、もっとも重要な対策になることは間違いありません。本記事では、「乳がん検診はいつから受けるべきか?」「20代、30代でも乳がん検診の対象になるのか?」「マンモグラフィ検査と超音波検査はどちらを選べばいいのか?」など、乳がん検診に関する様々な疑問にお答えします。
乳がん検診はいつから受ける?
乳がんは、女性が罹患するがんの中でもっとも罹患数が多く、若い世代から高齢者まで、あらゆる年代の女性に発症する可能性があるがんです。早期発見・早期治療のためには、定期的な乳がん検診の受診が欠かせません。
現在、国が推奨する対策型検診では、40歳以上の女性は2年に1回、マンモグラフィによる検査を受けることが推奨されています。これは、日本人女性の乳がん罹患率が40代から増加し始め、40代後半から50代前半に最初のピークを迎えるという統計データに基づいています。
ただし、乳がんは20代、30代の女性も発症する疾患であり、40代未満だからといってリスクはゼロではありません。特に、ご家族に乳がんや卵巣がんの既往歴がある方はリスクが高いため、20代、30代のうちから定期的に乳がん検診を受診することが大切です。
また、年代にかかわらず、すべての女性にとって大切なのが、日頃からご自身の乳房の状態に関心を持つ「ブレスト・アウェアネス」です。定期的な乳がん検診と、ブレスト・アウェアネスを意識したセルフチェックが、ご自身の未来を守ることにつながります。
乳がん検診に適した時期
乳がん検診を受けるのに適したタイミングは、月経開始後5〜10日頃の、乳房の張りが少なくなる時期です。この時期は乳腺の状態が安定しているため、より正確な診断が期待できます。また、マンモグラフィ検査による痛みを感じにくい時期でもあります。閉経後の方は、体調の良い時期を選んでいつでも受診していただけます。
20代・30代でも乳がん検診を受けた方がいい人

乳がんは40代以降に多い疾患ですが、若いからといって乳がん検診を受診しなくていいわけではありません。次に当てはまる方は、20代、30代でも乳がん検診の受診が推奨されます。
ご家族や近親者に乳がん・卵巣がんになった方がいる
乳がんの約5〜10%は、遺伝的要因が強く関わっている「遺伝性乳がん」と考えられています。ご自身の母親や姉妹、娘、あるいは祖母、叔母などに乳がんや卵巣がんの既往歴がある方は、そうでない方に比べると、乳がんを発症しやすい傾向にあります。
日本では、国が費用を補助する対策型検診で、40歳以上の人に2年に1回、マンモグラフィによる乳がん検診を受けることを推奨していますが、遺伝的なリスクがある人は40歳になるのを待つのではなく、20代、30代からの受診が推奨されます。
自覚症状がある(しこりなど)
乳房のしこりは、乳がんのもっとも代表的な症状ですが、それ以外にも注意すべき症状はいくつかあります。たとえば、「乳頭からの血液が混じった分泌物」「乳房の皮膚のくぼみやひきつれ」「乳頭のただれや陥没」「左右の乳房の形や大きさの変化」などは、乳がんに見られる症状です。このように、乳房の状態に普段とは違う点が見られたら、すぐに医療機関を受診してください。
これらの症状は、乳がんではなく、良性の乳腺症や乳腺線維腺腫などが原因になっているケースもあります。しかし、良性か悪性かを自己判断することはできません。20代、30代の方でも異変に気付いたら放置せず、すみやかに専門医に相談しましょう。
乳がんリスクが高い人
初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産経験がない、授乳経験がない、閉経後の肥満、習慣的な飲酒、喫煙などは、乳がんの発症リスクを高めることが知られています。これらのリスク因子に当てはまる方は、20代、30代のうちから定期的に乳がん検診を受診することをお勧めします。
乳がんの検査方法と違い

乳がん検診でおこなわれる代表的な検査方法が、超音波検査(エコー検査)とマンモグラフィ検査です。それぞれにメリット・デメリットがあるため、違いを正しく理解したうえで、ご自身に合った検査方法を選択することが大切です。
超音波検査(エコー検査)
乳房超音波検査(エコー検査)は、高周波の超音波を乳房に当て、その反射波を画像化して乳房内部を調べる検査です。探触子(プローブ)を乳房の表面に滑らせるだけで検査ができ、痛みや放射線被ばくの心配がなく、身体への負担が極めて少ないのがメリットです。
乳房超音波検査は、特に乳腺組織が密な「高濃度乳房(デンスブレスト)」の診断に向いています。高濃度乳房は、20代、30代などの若い世代に多く見られますが、後述するマンモグラフィ検査では乳腺が白く写るため、同じく白く写る病変を見つけにくいケースがあります。その点、超音波検査なら、高濃度乳房でもしこりなどの病変を明瞭に捉えることができます。妊娠中や授乳中の方でも安全に受けることができ、幅広い年代の女性に適した検査だと言えます。
ただし、乳がんのサインの一つである微細石灰化の検出は苦手としています。微細石灰化を発見するには、マンモグラフィ検査のほうが優れています。
マンモグラフィ検査
マンモグラフィ検査は、乳房専用のX線撮影装置を用いた検査であり、乳がんによる死亡率を減少させる効果が科学的に証明されている唯一の検査方法です。乳房を透明な板で挟んで薄く広げ、乳腺の重なりを少なくすることで病変を鮮明に写し出します。
マンモグラフィ検査の大きなメリットは、触診では分からないような非常に小さなしこりや、超音波検査では見つけにくい微細石灰化を検出できる点にあります。微細石灰化は、ステージ0の乳がん(非浸潤性乳管がん)のサインであることがあり、これを捉えることは早期発見のために極めて重要です。
一方、マンモグラフィ検査のデメリットとしては、乳房を圧迫するときに痛みをともなうことや、微量のX線被ばくがあることなどが挙げられます(ただし、X線の被ばく量は健康への影響は無視できるほど低いレベルです)。また、乳腺組織が密な「高濃度乳房」の場合、病変が乳腺に隠れて見つけにくいケースがあります。
乳がん検診は毎年受けるべきか
国の指針では、40歳以上の女性を対象としたマンモグラフィによる乳がん検診は「2年に1回」の頻度が推奨されています。これは、毎年の検診と2年に1回の検診とで、乳がんによる死亡率を減少させる効果に大きな差がないという研究結果に基づいています。ただし、これはあくまで対策型検診の考え方です。遺伝的なリスクがある方などは、人間ドックなどの任意型検診で毎年受診しておいたほうが安心です。
乳がん検診に関するよくある質問
「乳がんかもしれない12の症状とは何ですか?」「乳がん検診は全額自己負担ですか?」という2つの質問にお答えします。
乳がんかもしれない12の症状とは何ですか?
米国のNPO法人が提唱している「乳がんの12の症状(Know Your Lemons)」のことです。ご自身の乳房の変化に気づく「ブレスト・アウェアネス」を実践する際は、この12の症状がないかチェックするのが良いでしょう。
①硬いしこり
②厚みのある部分
③へこみ
④乳首のかさぶた
⑤赤みや熱感
⑥新たな分泌物
⑦皮膚のただれ
⑧こぶ
⑨血管が浮き出る
⑩陥没乳頭
⑪形や大きさの変化
⑫オレンジの皮のような皮膚
乳がん検診は全額自己負担ですか?
乳がん検診の費用や負担割合は受診方法によって変わってきます。主に以下の3つのパターンがあります。
・対策型検診
自治体が実施する検診。無料または数百円〜数千円程度の自己負担で受診できます。
・任意型検診
医療機関が提供する人間ドックなどの検診。費用は1〜3万円程度が目安で、全額自己負担となります。
・保険診療
しこりなどの自覚症状があって医療機関を受診し、医師が検査が必要だと判断した場合、検査費用は保険が適用され3割負担となります。
まとめ
乳がんは、40代以降に発症リスクが高くなる疾患ですが、早期発見・早期治療のためには、20代、30代のうちから定期的に検診を受けることが重要です。SBIメディックでは、一般的な健康診断では受けられない高精度な乳がん検査を提供しています。社会的な責任を担う立場にある方、あるいはパートナーの方は、ご自身だけでなく、ご家族や職場、社会のためにも、乳がんリスクの早期検知に努めていただきたいと思います。
SBIメディックでは、東京駅直結の上質な空間で会員制人間ドックを受けることができ、経営者をはじめとするエグゼクティブの方々に向けた国内最高峰の予防医療サービスをご提供しています。人間ドックを中心とする「予防サポート」はもちろん、専門医のご紹介やセカンドオピニオンなどの「治療サポート」、抗加齢医療や再生医療、エイジングケア、デンタルケアなど加齢に伴い重要になる「エイジマネジメント」までを一体でご提供することで、「いつまでも若々しく健やかな人生」をお送りいただけるようサポートいたします。
▼関連リンク
会員制人間ドック「SBIメディック」の詳細はこちら
※参考:
乳房:[国立がん研究センター がん統計]
乳がん検診について:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版 |一般社団法人日本乳癌学会
Know Your Lemons® for Early Detection