
会社員には年に一度の健康診断が義務付けられていますが、個人事業主にこのような義務はなく、基本的に自ら申し込みをしなければ健康診断を受診することができません。毎日忙しくしていると健康管理がおろそかになりがちですが、日々の仕事のパフォーマンスを維持し、長く元気に働くためにも、定期的に健康診断を受診することが重要です。今回は、個人事業主が健康診断を受ける理由や健康診断の受け方、費用などについて解説いたします。
個人事業主やフリーランスが健康診断を受ける理由
企業は、従業員に定期健康診断を受診させることが義務付けられており、基本的に会社員は年に1回、会社からの指示によって健康診断を受診します。
一方で、個人事業主やフリーランスは健康診断の受診が義務付けられておらず、受診するためには自ら申し込みをする必要があります。健康診断を受診するかどうかが個人に委ねられているため、後回しにしてしまう方や忘れてしまう方も多いようです。しかし、健康診断を受診しないことは個人事業主・フリーランスにとってリスクになり得ます。
個人事業主こそ健康に投資しましょう
個人事業主は、会社員と違って企業による健康サポートを受けることができません。病気で休業しても傷病手当は支給されません。
健康状態が良いときは問題なくパフォーマンスを発揮できますが、健康を損なって仕事ができなくなると収入が途絶えてしまいます。最悪の場合は、事業の継続が難しくなるケースもあります。しかし、定期的に健康診断を受け、生活習慣の改善に努めることで、健康を維持しやすくなります。
このように、自分自身の健康状態が事業の持続可能性に直結するのが個人事業主です。厚生労働省も「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」を作成し、個人事業主の健康管理の重要性を示しています。
▼ 関連リンク
個人事業者等の健康管理に関するガイドライン(素案)|厚生労働省
健康診断を受けているとセルフメディケーション税制が適用になる
個人事業主が健康診断を受けていることは、セルフメディケーション税制の適用を受ける要件の一つとされています。
セルフメディケーション税制とは、2017年1月から開始された医療費控除の特例です。健康の保持増進および疾病の予防のために一定の取り組みをしている方が、その年中に12,000円を超える対象医薬品を購入した場合に、購入費用の一部について所得控除を受けることができる制度です。健康診断の受診は「一定の取り組み」として認められるため、健康診断を受けている個人事業主は所得控除を受けることができ、所得税や住民税の負担軽減につながります。
▼ 関連リンク
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について|厚生労働省
個人事業主の健康診断はどこで受けられる?3つの方法をご紹介

個人事業主は自ら申し込んで健康診断を受ける必要がありますが、どこで受診すれば良いのでしょうか。3つの選択肢についてご説明します。
① 自治体の健康診断を受ける
住んでいる市区町村が実施している健康診断を受ける方法です。自治体によって健康診断の内容は異なりますが、無料または低額で受診できるのがメリットです。また、特定の年齢(年齢層)に該当する場合、より詳しい検査を受けられるのが一般的です。具体的な年齢や検査内容は自治体によって異なりますが、たとえば、40歳以上の住民を対象に胃がん検査を推奨している自治体は多くあります。また、2008年からは40~74歳の住民を対象に、生活習慣病のリスクを評価する特定健診(メタボ健診)が行われています。
一方で、指定された医療機関でしか受診できないことや検査項目が限られることなどはデメリットだといえるでしょう。また、自治体によっては予約が取りにくく、受診するまでに時間がかかる場合があります。
② 国民健康保険組合の健康診断を受ける
個人事業主は、業種や職種によって「国民健康保険組合(国保組合)」に加入することができ、加入している場合は、その組合の健康診断を受けることができます。
国民健康保険組合とは、特定の職業や事業に従事する人たちが集まって組織する医療保険組合です。組合員同士が助け合い、医療費の負担を軽減することを目的としており、多くの国民健康保険組合では、健康診断費用の一部または全額を補助する制度を設けています。少ない負担で健康診断を受診できることがメリットですが、受診できる医療機関が限られていることはデメリットだと言えます。
③ 病院・クリニックの健康診断を受ける
病院・クリニックが実施している健康診断を受ける方法もあります。病院・クリニックでの健康診断は、ご自身の体調や希望に応じて検査内容を選べる点が大きな魅力です。基本的な健康診断に加え、より精密な検査が可能な人間ドックを受診することもできます。医療機関ならではの充実した設備で専門的な診断を受けられるため、安心して健康管理を行えるでしょう。
ただし、病院・クリニックの健康診断には補助・助成などがなく、全額自己負担になります。また、人気のある病院・クリニックは予約が取りにくいこともあります。
個人事業主が健康診断を受ける際の費用

個人事業主の健康診断費用は、どこで健康診断を受けるかによって変わってきます。上述のとおり、自治体の健康診断や国民健康保険組合の健康診断は比較的低額で、あるいは無料で受診することができます。
一方、病院・クリニックでの健康診断は精密な検査や人間ドックを受けられる分、相応の費用がかかります。一般的な健康診断であれば数千円~1万円程度が相場ですが、人間ドックなど、より詳細かつ広範囲の検査を受ける場合は数万円~数十万円の費用がかかります。
健康診断にかかった費用は経費で落とせる?
個人事業主が負担した健康診断の費用は、経費として計上できません。これは、健康診断が事業のためではなく、個人の健康維持を目的とした支出とみなされるためです。青色事業専従者(家族従業員)についても同様で、経費にはできません。一方、家族以外の従業員を雇用している場合は、その従業員の健康診断費用を経費として計上できます。これは、従業員の健康管理は事業運営の一環と考えられるためです。
また、健康診断費用は基本的に医療費控除の対象外です。ただし、健康診断を受けた結果、重大な病気が見つかり、そのまま治療を受けた場合は、健康診断の費用も医療費控除の対象となる可能性があります。経費や控除の仕組みを理解し、適切に活用しましょう。
個人事業主が健康診断で注意する点
個人事業主の方は、健康診断で以下の3点に注意するようにしましょう。
必ず毎年受診する
健康診断の目的は健康を維持することですが、定期的に受診していないと、この目的を果たすことができません。会社員であれば、毎年会社から健康診断の案内があるため、受診を忘れることは少ないでしょう。しかし、個人事業主は自分で申し込む必要があるため、後回しにしてしまう人や忘れてしまう人もいます。「毎年、誕生月に健康診断を受診する」など年間の予定に組み込んで、毎年確実に受診するようにしましょう。
自分に必要な検査項目を押さえる
個人事業主が健康診断を受ける際は、自分に必要な検査項目を押さえることが重要です。20~30代の方は、厚生労働省が示す「労働安全衛生法に基づく定期健康診断」の健康診断項目(下記)を参考にしてみてください。
① 既往歴及び業務歴の調査
② 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
③ 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
④ 胸部エックス線検査及び喀痰検査
⑤ 血圧の測定
⑥ 貧血検査(血色素量、赤血球数)
⑦ 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
⑧ 血中脂質検査(LDL・HDLコレステロール、TG)
⑨ 血糖検査
⑩ 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
⑪ 心電図検査
40代を迎えると生活習慣病やがんのリスクが高まるため、人間ドックや各種がん検診を積極的に活用し、健康状態をしっかり確認しましょう。女性の場合は、子宮頸がんや乳がんなど、女性特有の病気をケアすることも大切です。子宮頸がん検診の受診推奨年齢は20~30代以降、乳がん検診の受診推奨年齢は40代以降とされています。 ※参考:子宮頸がん – 公益社団法人 日本産科婦人科学会 ※参考:Q1 乳がん検診について教えてください | ガイドライン目次 | 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版|一般社団法人日本乳癌学会
事前の指示を守る
食事や薬は、健康診断でおこなわれる血液検査や尿検査の結果に大きな影響を与えます。食事制限や服薬制限など、事前の指示に従ったうえで健康診断を受診するようにしましょう。
まとめ
個人事業主の方が日々ベストパフォーマンスを発揮し、事業を継続するためには、毎年欠かさず健康診断を受診することが重要です。ただし、健康診断の目的はあくまでも健康を維持することであり、病気の早期発見を目的としたものではありません。年齢を重ねるにつれ、生活習慣病やがんのリスクが高くなるため、40代以上の方には人間ドックの受診をおすすめします。病気の早期発見を目的とした人間ドックを受診してしっかりと病気の芽を摘んでおくことが、事業の安定的な運営につながります。
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