男性更年期障害とは?症状、治療や予防方法を紹介

志賀淑之
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志賀 淑之

泌尿器科

男性更年期障害とは、加齢にともないホルモンバランスが崩れることで引き起こされる様々な症状のことを言います。「慢性的な疲労を感じる」「何をするにもやる気が起きない」「些細なことでイライラする」「性欲が減少した」「気分が落ち込む」といった症状・変化を感じている方は、男性更年期障害かもしれません。今回は、男性更年期障害の症状や治療方法、予防方法などについて解説していきたいと思います。

この記事の監修者

志賀 淑之
東京国際クリニック/泌尿器科
1994年筑波大学医学専門学群卒業。虎の門病院、聖路加国際病院に勤務、東京腎泌尿器センター大和病院院長を経て、2015年からNTT東日本関東病院 泌尿器科専門医、ロボット手術センター長。日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医指導医。2024年1月より東京国際クリニック泌尿器科 勤務。

男性更年期障害(加齢性腺機能低下症/LOH症候群)とは?

男性更年期障害とは、加齢にともない、男性ホルモンである「テストステロン」の分泌量が減少することで現れる、身体的あるいは精神的な症状・不調のことを言います。

これまで、「更年期障害」と言うと、女性特有のものだというイメージがありましたが、男性にも女性の更年期障害に似た症状が起こることがわかっています。これが 男性更年期障害であり、「加齢性腺機能低下症」や「LOH症候群」と呼ばれることもあります。詳しい症状は後述しますが、気分が沈むなどの精神症状、ほてりや動悸などの身体症状、性欲減退などの性機能症状が見られます。

女性の更年期障害は、女性ホルモンである「エストロゲン」が急激に減少する閉経前後のおよそ10年間に起こり、閉経後は徐々に症状が軽くなっていきます。一方、男性更年期障害は、男性ホルモンである「テストステロン」の減少が主な原因ですが、テストステロンは中年以降、加齢とともに穏やかに減少していくため、症状が出る時期も、症状が続く期間も個人差があります。

一般的に、男性更年期障害は40代以降、どの年代でも起こる可能性があると言われており、ホルモンの減少が大きい場合は30代でも症状が出る場合があります。ただ、すべての男性が更年期障害になるわけではなく、まったく症状が現れない人もいます。

男性更年期障害の症状

男性更年期障害の症状は様々ですが、一般的なものとしては以下のような症状が挙げられます。

▼ 精神症状

  • イライラ感、怒りっぽくなる
  • 気分の落ち込み、不安感
  • 無気力、意欲の低下
  • 集中力の低下
  • 記憶力の低下

▼ 身体症状

  • ほてり
  • 動悸
  • 疲労感
  • 筋力の低下
  • 関節や骨の痛み
  • 体重増加、内臓脂肪の増加
  • 睡眠障害

▼ 性機能症状

  • 性的興奮、性欲の減退
  • 勃起機能の低下

男性更年期障害のチェックリスト

男性更年期障害の問診に使われているのが、以下の「AMS(Aging Male’s Symptoms)質問票」です。

なし軽い中程度重い非常に
重い
総合的に調子が良くない12345
関節や筋肉の痛みがある12345
ひどい発汗がある12345
睡眠の悩みがある12345
よく眠くなる、しばしば疲れを感じる12345
イライラする12345
神経質になった12345
不安感がある12345
身体の疲労や行動の低下を感じる12345
筋肉の低下がある12345
憂うつな気分になる12345
「絶頂期は過ぎた」と感じる12345
「力尽きた」「どん底」にいると感じる12345
ひげの伸びが遅くなった12345
性的能力の衰えがある12345
早朝勃起の回数が減少した12345
性欲の低下を感じる12345
  • 合計点数が17~26点の場合:男性更年期障害ではありません。
  • 27~36点の場合:軽度の男性更年期障害の可能性があります。
  • 37~49点の場合:中程度の男性更年期障害の可能性があります。
  • 50点以上の場合:重度の男性更年期障害の可能性があります。医療機関の受診・治療が推奨されます。

男性更年期障害とうつ病の見分け方

男性更年期障害によく見られる「不眠」「疲労感」「気分の落ち込み」などの症状は、うつ病の症状としてもよく見られるものです。そのため、男性更年期障害なのかうつ病なのかは、慎重に見極めをする必要があります。特に、症状が軽い場合、両者を区別するのは簡単ではありません。また、男性更年期障害とうつ病は同時に発症することもあり、男性更年期障害の症状がうつ病を引き起こすこともあります。

どちらかと言えば、うつ病のほうが、精神症状が顕著に出る傾向にあります。重度のうつ病の場合、強い絶望感や無価値感、死にたいという気持ちがあるため、すぐに精神科を受診することが大切です。

男性ホルモンの減少によって引き起こされる可能性がある病気

男性ホルモンの減少によって引き起こされる代表的な症状の一つが「ED(勃起障害)」です。男性ホルモンであるテストステロンが減少すると、血管の弾力性が失われ、動脈硬化のリスクが増加します。

糖尿病などの生活習慣病とEDの関連は以前から知られていましたが、近年では特に、血管の健康状態とEDとの相関が強調されています。実際に勃起のメカニズムは血管機能と深く関係しており、動脈硬化や血管の老化によって血流が悪くなると、陰茎への血液供給が不十分になり、EDのリスクが高くなります。

その他、男性ホルモンが減少することで内臓脂肪が増えやすくなり、肥満やメタボリックシンドロームになるリスクが高くなります。また、インスリン抵抗性が増加することにより糖尿病のリスクが高まるほか、中性脂肪や悪玉コレステロールが増加することで、動脈硬化に起因した心筋梗塞や脳卒中のリスクが増大する可能性があります。さらに、骨密度が低下することにより骨粗しょう症が引き起こされることもあります。

テストステロンの減少によるホルモンバランスの乱れ、身体的変化にともなう自己評価の低下などが重なることでストレスや不安が増大し、うつ病を発症する場合もあります。

男性更年期障害の治療方法

男性更年期障害の治療法は、男性ホルモン値や症状の重さ、年齢、他の持病の有無など、様々な要素を考慮して決定されます。一般的に、症状が軽い場合は生活習慣の改善が中心になり、症状が重い場合は男性ホルモンを補充する治療が検討されます。

▼ 症状が軽い場合

栄養バランスの良い食事、適度な運動、質の高い睡眠など、生活習慣の改善を図ります。喫煙や過度な飲酒はホルモンバランスに悪影響を与えるため、禁煙・節酒をすることも重要です。また、ストレスをチェックして、ストレスの軽減・解消に取り組みます。

うつ症状が強い場合は抗うつ薬、性機能の低下が著しい場合はED治療薬、不眠に悩んでいる場合は睡眠薬など、症状に合わせた薬が処方されるのが一般的です。体質や症状によっては、漢方薬が処方されることもあります。

▼ 症状が重い場合

男性ホルモン値が低く、症状が重い場合は、ホルモン補充療法が選択されます。男性ホルモンであるテストステロンを補充することで、様々な症状の改善が期待できます。

男性更年期障害は何科に相談したらいい?

男性更年期障害が疑われる場合、どの科に相談すべきか悩む方も多いでしょう。最も適切なのは、「男性更年期外来」のある病院を受診することです。近隣に男性更年期外来がない場合は、泌尿器科や総合内科、抗加齢の専門医を受診することも一つの選択肢です。

一般的に、男性更年期障害の診療は泌尿器科でおこなわれていますが、それ以外にも、内科や心療内科、精神科などで診療しているところもあります。性欲減退や勃起不全など性機能にお悩みの場合は泌尿器科、疲労感やほてりなど身体症状が中心の場合は内科、不安感やイライラなど精神症状が強い場合は心療内科や精神科を受診するのが良いでしょう。

男性更年期障害の予防方法

男性更年期障害は、加齢やストレスによってテストステロンが減少することで引き起こされるため、予防するのは簡単ではありません。しかし、生活習慣を見直すことでテストステロンの維持が期待できるため、改善への第一歩となります。

まず、栄養バランスの取れた食事が重要です。特に、亜鉛やビタミンD、マグネシウムなどはテストステロンの分泌を助ける栄養素として知られています。これらを意識的に摂取することで、ホルモンバランスを整えることができます。また、十分な睡眠と休養をとり、ストレスを軽減することもホルモンの正常な分泌をサポートします。

さらに、男性更年期障害を予防するためには適度な運動習慣が欠かせません。特に、筋力トレーニングはテストステロンの分泌を促進することが示されています。筋肉量を増やすことで基礎代謝が向上し、体重管理がしやすくなります。運動によって筋肉が刺激されることでテストステロンが分泌され、男性更年期障害の症状軽減につながるのです。

このように、テストステロンの維持には生活習慣の改善が不可欠です。食事、睡眠、運動をバランスよく取り入れ、筋肉をつけることで、男性更年期障害の予防・改善が期待できます。

まとめ

男性更年期障害を放っておくと、重大な疾患につながることもあります。男性更年期障害が疑われる方は、一度検査を受けることをおすすめします。SBIメディックでも、男性ホルモン量などを調べる男性更年期障害の検査に対応しています。

SBIメディックは、SBIグループが運営する東京駅直結の会員制人間ドックです。経営者をはじめとするエグゼクティブの方々に向け、国内最高峰の予防医療サービスをご提供しています。人間ドックを中心とする「予防サポート」はもちろん、専門医のご紹介やセカンドオピニオンなどの「治療サポート」、再生医療やエイジングケア、デンタルケアなどの「エイジマネジメント」を一体でご提供することで、「いつまでも若々しく健やかな人生」をご支援します。

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