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Medicコラム

高橋 通[たかはしとおる]東京国際クリニック/医科 院長
循環器科・抗加齢医療

高橋 通

新型コロナウイルス感染症と循環器疾患

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐため、国民には「新しい生活様式」という行動変容が求められています。在宅でのテレワークの奨励や仕事環境の変化によるストレスなどで、循環器系に及ぼす影響はどのようなものがあるでしょうか。
 特に新型コロナウイルス感染症では、高血圧の持病のある方が重症化するとの報告もあり、循環器疾患とこのウイルス感染との間に何らかの関係があることが報告されています。〝WITHコロナ″の時期をどのような点に注意して過ごせばよいのか伺いました。

コロナ太り~コロナメタボへの進展

新型コロナウイルス感染症で、政府の緊急事態宣言解除後に人間ドックをお受けになられた方々の検査結果で気になるのは、体重が増加している方が増えていることです。ここ数か月の間に「体重が増えました」という方の血液データを拝見すると、血糖値や中性脂肪の値が悪化していたり、脂肪肝のデータが悪くなっているという傾向があります。
さらに、いわゆる“自宅飲み”が増えたことから尿酸値が上がっている方も見受けられます。逆に自粛以前は毎晩のように会社の接待があった方は、外食が減り体重が落ち肝機能も良くなり、尿酸値も下がる傾向にあります。
在宅テレワークでは、座りっぱなしのデスクワークになりがちです。運動量についても、以前は毎日8,000歩 歩いていた人たちが、外出自粛で平均3,000歩になってしまったという調査報告もあります。運動不足によるコレステロール値の悪化、糖尿病の悪化、メタボリックシンドロームによる動脈硬化の促進などが起きてきます。

日常生活における歩数の目標( 1日当たり)

※厚労省ホームページ「健康日本21(身体活動・運動)」より
成人:男性 9,200歩/女性 8,300歩
高齢者:男性 6,700歩/女性 5,900歩

ストレスによる症状悪化も深刻

さらに、毎日の陽性者数増減などのニュースに接することによる精神的なストレスの影響も見逃せません。こうしたストレスを受けると不眠や疲れとなって現れ、交感神経が優位となり、それが原因で脈が速くなったり、血圧も高くなります。このようなことはやがて心臓や血管へのダメージとなって現れます。動悸・息切れの頻度が増えるようでしたら、直ぐに循環器科をご受診ください。

通勤時や仕事環境の変化による新たなストレス

また、政府の勧める「新たな生活様式」をとりたくても、通勤時の電車のつり革や手すりからの感染の恐怖感や、満員電車での密な環境での不安、さらに長引く不況や将来的な生活不安、来るべき冬にはさらにコロナの陽性患者が増加するのではないかなど、まさにコロナ禍での新しい種類のストレスに私たちは日々さらされています。

自律神経失調症へのステップ

こうした状況下では、やがて交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、「自律神経失調症」を引き起こすことも考えられます。
不眠や食欲減退、疲れが取れない、だるいなどの症状からさらに進展し、頭痛、めまい、動悸、息切れ、冷えなど自律神経失調特有の症状が出現します。
さらに進むと、いら立ちやすくなったり、涙もろくなり、どうしようもない不安感にかられて日々の生活にも支障を来すというような状況になってしまいます。
このようないわゆる「コロナうつ」ともいうべき症状は、テレワークで発見がより遅れるということも考えられます。自覚症状やご家族からの指摘などで、「最近、少しいら立つことが多い」とか、「理由がなく、とても不安になることがある」というような方は、早めの心療内科へのご受診をお勧めします。

一年に一度は「LOX-index(ロックス・インデックス)検査」をお受けください

LOX-index検査は、脳梗塞・心筋梗塞発症リスクを評価する検査です。日本国内で行われた、約2, 500名を約11年追跡した研究成果がベースになっています。この研究結果から、血液中のコレステロールに関連する特定のタンパク質などを調べ、この値が高いと今後10年以内の脳梗塞の発症率が約3倍、心血管疾患発症率が約2倍となることがわかりました。(総合人間ドック・スーパープレミアムには、この検査が含まれています)

会員様へのメッセージ

新型コロナウイルスのワクチンと治療薬の開発を待ちつつ、極力3密を避け、マスク着用、うがい・手洗いの励行で感染予防を心掛けていただくことが、いま我々にできる最善の方法です。
さらに1日1回検温を行って体温(平熱を知る)を管理することや、高血圧の方は血圧の測定、糖尿病の方は血糖値の測定など自己管理をしっかりと行っていただければと思います。
また、だるさや息苦しさがないか、味覚障害や嗅覚障害がないかなど、日々チェックしていただき、少しでも違和感がある際は、早めにかかりつけ医や当クリニックにご相談ください。

WITH コロナ・ワンポイントアドバイス

自律神経失調症にならないために、副交感神経が優位になるような生活をおくることが大切です。そのためには意識して腹式呼吸を行うこと。体を柔軟にするストレッチは血管も柔らかくなります。さらに、人の少ない時間帯を狙って、ご自宅周辺をウォーキングすることもお勧めです。


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