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齋田 良知[さいた よしとも]東京国際クリニック / 整形外科

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関節の痛みを和らげ傷の修復をより早く

社会の高齢化に伴い、加齢とともに患う慢性的な関節の痛みを訴える方が多くなっています。特に膝については変形性膝関節症の痛みでは、放置すると痛みが増して、QOL(生活の質)は大きく低下しています。この度、診療を開始した整形外科では、こうした関節の炎症や痛み、スポーツ外傷・障害に着目し、いま新たな治療法を追求しています。

 

1. 関節炎や関節痛の従来の治療法

従来、加齢に伴う膝関節の炎症や痛みには、内服薬やヒアルロン酸の注射による治療「保存的治療」と、人工関節などを入れる「手術による治療」しか方法がありませんでした。毎日痛みに耐えながら、それでも「手術は嫌だ」と我慢を強いられている患者さんも少なくありません。

 

2. 痛みや炎症を抑制するPRP*1療法(多血小板血漿療法)

いま、ご自身の血液や脂肪などを活用した関節治療が注目されています。
私たちが外傷を負ったり身体に炎症を起こすと、血液中の血小板という成分が直ちに傷口や炎症の部位に集まり修復を行います。血小板には「組織修復」と「抗炎症(痛みや腫れの緩和)」という2つの作用があることがわかっています。
PRP療法はこの働きを利用し、患者さんご自身の血液を採取して特殊な技術を用いて血液中の血小板が多く含まれる部分のみを抽出し、自己PRPを作成します。このPRPには、成長因子が豊富に含まれており、患者さん自身が持つ修復力をサポートします。ご自分の血液ですから副作用もほとんどなく、患部に入れることで組織修復や抗炎症効果が促進され、早期治癒や痛みを軽減します。
PRP療法はタイガーウッズ選手や田中将大投手、大谷選手らスポーツ選手のけがの改善に使用され一躍注目されました。

 

3. 組織修復効果の高いPFC-FD*2
(血小板由来成長因子濃縮液凍結乾燥)療法

さらに研究を進めていくと、PRPには主な成長因子(血小板が傷を治す際に放出するもの)が5~7種類あり、それぞれ働きが異なることがわかりました。そこでPRPがもつ「組織修復」をターゲットにした研究を進め、PRPに含まれる成長因子を濃縮し、成分を高めた成長因子のみを抽出・濾過して無細胞化し凍結乾燥させたPFC-FDを作成することができました。

 

糖尿病の予備軍を含めると1,000万人

・PDGF  血管新生や細胞増殖を促進・マクロファージ活性化
・VEGF  血管内皮細胞の増殖や血管新生を促進
・TGF-β  線維芽細胞の増生・新生創傷治癒促進
・EGF   幹細胞増殖・分化他成長因子の効果増強
・FGF   筋細胞の増殖・血管新生促進
このPFC-FD療法は、成長因子のみを凍結したフリーズドライ製法のため保存できることから、痛みを伴う傷の修復が必要な際にすぐ治療できることが最大のメリットです。

 

4. PFC-FD療法の効果をさらに高めたVFD療法*3

そして、私が所属する順天堂大学の研究講座と細胞を精製している企業との共同研究によりPFC-FD療法の効果を更に高めることができました。その治療法が今回、東京国際クリニックにて行わせていただくことになりましたVFD療法です。VFD療法は、成長因子をより高濃度に濃縮することに成功したため、従来の治療法に比べ組織修復作用も抗炎症作用も格段に高まっています。
また、PFC-FD療法同様に高濃縮した成長因子をフリーズドライしているため、事前に血液を採取して精製しておけば、痛みが出たり傷を負った際にすぐに治療できるというメリットは当然そのままです。 現在、私の研究講座の医師しか施術ができないため、ごく限られた医療機関※でのみ先行して治療を受けていただけます。
※国内6施設 2021年9月13日現在

 

5. VFD療法の適用

これらの療法は、もともとスポーツ選手や一流アスリートへの治療法として始まりましたが、現在では多くの方が受診されています。
例えば、変形性膝関節炎によるひざの痛みで悩まれている方には適応です。また、ゴルフやテニスなどによる肘関節、股関節、肩関節などの他、靭帯損傷や腱炎などにも適用可能です。

 

6. VFD療法の具体的な治療法は・・・

初回受診では関節の状態、痛みの強さなどを伺い、VFD療法のお話を詳しくさせていただいています。その後、40mLほどの採血を行い、専門の加工受託施設で血小板の活性化、成長因子の抽出などを経て粉末状のVFDを得ることができます。VFD療法では、1回の採血で部位により3回(~6回)分注射することができます。膝の場合、採血から約1か月後の受診時に1回目のVFD療法を行い、その経過を見ながらさらに追加で2回のVFDをおこなうことが可能です。VFD療法は自己血を使った副作用の少ない安全・安心な治療法です。

 

7. PFC-FD療法、VFD療法の効果

治療後の経過は、関節の変形の状態によって個人差がありますが、約6割の方が関節の痛みから解放されています。ただ通常の痛み止めとは異なるので、注射後3~7日程度関節の腫れや痛みが出ることがありますが、その後軽快します。

 

*1:PRP=Platelet-Rich Plasma
*2:PFC-FD=Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dry
*3:VFD=Valuable Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dry

 

皆さまへのメッセージ

順天堂大学病院では年間約5, 000件のPRP療法を行っており、常に4か月先まで予約が埋まっている状態です。このPRPを発展させたVFD療法が、今回当クリニックでSBIメディック会員様に受けていただける機会となり、より身近なものになると考えています。ゴルフやテニスなどで痛めた、肘や膝の故障でお悩みの方に最適な治療法であると思います。当クリニックでの診療が皆様のQOL向上に寄与するものになればと考えております。
治らない関節の痛みなどでお悩みの方は、是非ご相談ください。

 

 

Column

スポーツドクターとしての経歴とPRP療法との出会い

私は整形外科医であると同時にスポーツドクターでもあります。2002年の「ジェフユナイテッド市原・千葉」のチームドクターを皮切りに、2010年からは「なでしこジャパン」の帯同ドクター、さらに2015年のイタリア留学時にはセリエA「ACミラン」でフェローシップを経て、現在では生まれ故郷である福島県いわき市のサッカークラブ「いわきFC」のチームドクターも務めています。
サッカー選手になることを夢に、小さい頃からボールを追いかけてきました。PRP療法との出会いも、実は自分のけがを少しでも早く治そうというところから生まれました。

Profile

2001年 順天堂大学医学部医学科卒業
同年   順天堂大学整形外科・スポーツ診療科入局
2007年 医学博士号取得
2015年 イタリアIstituto Ortopedico Galeazziへ留学
2018年 順天堂大学整形外科講師
2019年 順天堂大学整形外科准教授
2020年 順天堂大学スポーツ医学・再生医療講座特任教授に就任


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